第24章 孤独と絶望感
まぁ・・・及川の場合は大概が上辺だけの爽やかさだがな。
菅「本当にすみません!俺も手伝わせてください。よろしくお願いします!」
溝「あ、あぁ・・・」
駆け付けた勢いで言われ、コーチもタジタジだ。
俺はそっと紡を抱える手を緩め、隙間を開けた。
菅「オレ、抱えるの代わります。この後のセットも、試合、出るんですよね?」
笑顔を崩さず俺の前に立ち、役割を代わると申し出てきた。
「まぁ・・・出る、ケド」
菅「だったら尚更です。オレがここは代わります。だから少しでも休んで下さい・・・あ、でもあんまり回復されると・・・烏野が不利になるのも、ちょっと・・・」
語尾を口ごもりながら言うのを聞いて、思わず微かな笑いを漏らす。
「ま、疲れていようが回復しようが、次のセット・・・渡すワケには行かねぇケドな」
菅「・・・ですよねぇ」
あからさまに肩を落とす様子に紡も苦笑していた。
『岩泉先輩、ありがとうございました。もう・・・・・・もう、みんなのところに戻って下さい』
紡に言われ、1つ息を吐く。
「あぁ、そう、だな」
言いながら紡を解放し、頭にポンッと手を乗せる。
その手を離すのが名残惜しくて、何度も繰り返しポンポン、ポンポンしてみる。
『岩泉先輩・・・私の背、縮んじゃう』
「縮むわけねぇだろ!」
紡の呟きに笑いながらツッコミを入れ、ひと呼吸置いて、またな?と声をかけた。
・・・じゃあな。
そう言えばいいだけなのに。
〖 じゃあな 〗って言うのが、別れの言葉に思えて・・・言えなかった。
「おい、アンタ。城戸のこと頼むわ」
菅「もちろん」
言葉を交わし、場所を譲る。
菅「さ、紡ちゃん?ちゃんと捕まってね?ギューッとかしても全然大丈夫だから」
『スガさんにギューッはお断りです!』
菅「何でだよぅ!」
『だって清水先輩が気を付けなさいって言ってましたも~ん』
歩き出す後ろから、楽しそうな会話が聞こえて来る。
『あ!岩泉先輩!!』
紡に呼び止められ、振り返った。
『次のセットも、負けませんからね?』
懐かしい笑顔の中で、挑むような目をして俺に言う。
「言ってろ」
俺はそれだけ返し、後ろ手に手を振りながら歩き出した。