第24章 孤独と絶望感
『む、むむむ、ムリです!!』
・・・なっ?!
溝「いや、ムリって言われてもだな・・・」
『とにかくムリです!!』
そこまで拒否らなくても・・・だな。
紡の必死な態度に、コーチも困惑を見せた。
だぁぁぁ!!もう、めんどくせぇ!!
「お前、全力で否定すんじゃねぇよ!テープ巻かなきゃ終わんねぇだろが!ほら来い!」
『あ、ちょっと!!わッ・・・』
紡の腕をグイッと引き寄せ、自分の胸に頭を抱き寄せ、残る片方の腕は、紡の肩にまわして・・・腕を閉じた。
「コーチ、これでイイっすか?」
溝「おう、城戸さんも捕まっとけよ?」
『・・・はぃ』
体育館の中のざわめきが、俺の心臓の音で遠ざかっていく・・・
流れる血液さえも熱を帯び、全身が熱くなって今にも沸き立ちそうだ。
ダメだって・・・分かってる。
なのに心が隙間を埋めようと・・・小さな温もりに精一杯、手を伸ばす。
軋みながら、自制心に亀裂が入っていく。
待ってくれ・・・
あと、少しだけ・・・
少しでいいから・・・
力いっぱい抱きしめてしまいそうになる衝動を必死に押さえつけながら、ギュッと目を閉じる。
いま、お前はどんな顔をしているんだ?
お互いの温度を、懐かしいと思ってくれているんだろうか・・・
それとも・・・
烏野の主将との違いを・・・探しているんだろうか・・・
苦い考えに息が詰まりそうになった時、腕の中でモゾモゾと紡が動き出し、顔を上げようとしていた。
「こっち、見るな」
そう言って、俺は紡の視線を逸らしながら、肩に回した腕を引き寄せ、紡の頭を胸に押し付けた。
「今は。今はこのまま・・・頭ん中、カラにしとけ・・・」
そう言いながら、自分の鼓動が早鐘の様に伝い響いて来る。
願わくば・・・この鼓動が紡に伝わらないでくれ・・・
そう、くり返し祈った。
ー すみません!うちの城戸が大変お世話になってます! ー
見知らぬ声で、ハッと我に返る。
顔だけで、声の主を見た。
烏野の・・・
その声を聞いて、紡が俺の胸を押し返す。
『菅原先輩・・・』
菅「ゴメンね紡ちゃん。向こうでバタバタしてて。えっと、溝口コーチ・・・でしたよね?」
まるで及川の様な爽やか笑顔を振りまきながら俺達の所に来た。