第24章 孤独と絶望感
3セット目に入る前に、溝口コーチが足の様子を見てくれている。
溝「腫れはまだあるけど、熱っぽさは大分落ち着いたみたいだな。まだ、冷やしていた方がいい事には変わらないが・・・う~ん・・・どうすっかなぁ」
そう言って考え込む溝口コーチを、私は黙って見ていた。
溝「よし、少しテーピング巻いてみようか。あれだけ腫れてたし、今も少し足首がグラついてる気もするしな。岩泉、悪いがそこの救急セット取ってくれ」
溝口コーチが言って、岩泉先輩がすぐにそれを持ってくる。
その中から、溝口コーチは適切なサイズの物を取り出し、床に並べていく。
岩「俺、手伝います」
溝「あぁ、悪いな。じゃ城戸さん、俺の膝に足乗せて。アンカー巻くから」
『ひ、膝ですか?!』
溝口コーチに言われるも、膝に・・・とか抵抗があった。
岩「何してんだ、言われた通りに早く乗せろ」
『で、でも・・・膝って・・・』
桜太にぃに巻いて貰う時に、もちろん膝に足を乗せたことはある。
だけど、身内以外の人に足を乗せたことなんかない。
溝「遠慮せず、どうぞ?」
『いえ、ちょっと・・・は、恥ずかしくて』
岩「アホか!デコピンされたくなきゃ・・・」
岩泉先輩が私のおでこに指を近付けてくる。
私は慌てておでこを防護し、溝口コーチの膝にそっと足を乗せた。
それからは、溝口コーチが慣れた手つきでアンカーを巻き、角度と長さを合わせながら初期テーピングを巻いてくれる。
その指先が触れる度に、くすぐったさに身をよじらせては岩泉先輩に怒られながら、ある程度の所まで巻き終わる。
溝「とりあえず、これで1度立ってみて?微調整は、それからだな」
溝口コーチに手を差し出され、ゆっくりと立ち上がり、少しずつ両足に平均的に体重をかける。
まだ、大丈夫。
もうちょいイケる。
『・・・痛っ』
あと少しで両足で立てるという所で痛みが走り、差し出されていた手にしがみついた。
溝「なるほど。どの辺が1番痛い?」
言われた事に、私はその箇所を指しながら、痛みの感じと違和感を伝えた。
溝「よし分かった。岩泉、俺と変わって城戸さん支えとけ」
岩「はっ??」
『えっ??』
予想もしていなかった溝口コーチの言葉に、私達はそれぞれ声を上げた。
溝「俺が支えてたらテープ巻けないだろ。さ、早く代われ」