第24章 孤独と絶望感
『な、なな、何してるんですか?』
「いや、それは俺のセリフだ!目を瞑って両手を伸ばして、何の儀式だよ。アホか。それともあれか?お子様みたいに抱っこでもねだってんのか?」
伸ばされた両手をペシペシと叩きながら言うと、紡は慌てて手を下げた。
『これは・・・その、瞑想というか、なんというか』
そう言って、あはは・・・と小さく笑っている。
「お前は、ホント、おもしれぇヤツ」
スクイズの蓋を閉めながら、俺もそう返した。
「それよりお前、それどうなんだ?」
バケツに入れられた足に目線を送ると、紡もそれに気付いて足元に視線を落とした。
『最初は凄い冷たくて、ひゃぁぁってなりましたけど、今は温度に慣れたのか大丈夫です!』
・・・は?
何言ってんだコイツ。
「あのなぁ、俺が聞いてんのはバケツの温度じゃなくて、ケガの具合いだよ、具合い!」
『あっ・・・!』
「あっ!じゃねぇよ。なにボケかましてんだお前は・・・脱力するだろうが」
『ん~?体の力が抜けたなら、いいプレー出来るから良かったですね』
「そうじゃないだろ!お前の天然っぷりは相変わらずだな、まったく」
ホント、変わんねぇな。
紡の天然っぷりはホント、伝説たくさんあるからな。
バニラモナカ食べたいって言うから買ってやれば、一緒に食べたかったのに・・・と拗ね、じゃ、半分にしろって言ったら・・・
『縦半分と、横半分、どっちがいいですか?』
・・・どっちだって同じだろ!!とか。
急なポジション替えで及川にセッターの仕事云々を公園で教わる時も・・・
『あ!体育館にシューズ置きっぱなしだった!』
と、慌てる始末。
・・・公園なんだからシューズ要らねぇだろ!!とか。
アイツの大会の帰りに及川が腹減ったとか言い出して無理やり牛丼屋に誘えば・・・
『こういう所、初めて来ましたけど・・・メニューが牛丼でいっぱいですねー』
と、メニューと睨めっこしながら呟いたり。
・・・牛丼屋だからな、とか。
流石に最後のは、及川も腹抱えてウケまくってたけど。
あのスペック高い兄貴達が作る飯食ってたら、そんな店で食ったことないのは仕方ねぇかと俺も笑ったけどよ。
やべぇ。
思い出したら笑いが・・・
緩む口元をタオルで押さえ込み、込み上げる笑いに耐える。
けど・・・
耐えられねぇ・・・