第24章 孤独と絶望感
~岩泉side~
烏野のマネージャーが来てから、メンバー達がざわついている。
・・・特に、矢巾。
美人過ぎるだとか、女神のような微笑みだとか、烏野には女子マネがいて羨ましいとか。
挙句の果てには、紡がこっちにいる内にデートの約束を取り付けようなんか言い出す始末。
・・・うるせぇ。
例え天地がひっくり返っても、及川並に女にだらしねぇ矢巾になんか、紡に触れさせるかってんだ。
いや。
何で俺がムキになってんだ?
紡を誰が何に誘おうと、俺には関係ないだろ。
それに紡には、もう・・・
顔を拭くタオルの隙間から、烏野のベンチを見る。
そうだ。
紡には、あの烏野の主将が・・・いるじゃねぇか。
俺がとやかく心配する必要なんて、ない。
残念だったな、矢巾。
あの主将に比べたら、悪いがお前に勝ち目はない。
・・・それは、俺も同じ・・・か。
何、やってんだろうな、俺。
自分で勝手に終わらせて。
なのに、いつまでも引き摺ってる。
後悔なんか、あの日から何度だってした。
何度も、何度も、何度も・・・
だけどもう、アイツはどんなに手を伸ばしても届かない場所にいる。
それが、俺の現実だ・・・
それ以上は、もはや〖 if 〗の世界にしかない。
〖 大切なものは失ってから気付く 〗
そんなの、失う前から分かってた。
大切だと思うから、手放した。
俺のエゴに・・・巻き込まれる前に・・・
クソッ・・・
どんだけ女々しいんだ。
俺はさっき、紡の幸せを願ったじゃねぇか。
乱暴にタオルを肩にかけ、スクイズを取りに歩く。
3つ先の椅子に紡がポツンと座っている。
何か、声をかけてやるべきか?
それとも、そっとしておくべきか?
『なんか寂しいなぁ・・・』
・・・えっ?
小さな声が、俺に届く。
スクイズを口に付けたまま、そっと振り返る。
紡は、なぜだか目を閉じて両手を伸ばしていた。
1歩、また1歩と歩み寄る。
「何やってんだ?」
屈んで覗き込み、声をかけた。
すると紡は、ひと呼吸分の時間を開けて勢いよく目を開けた。
『えっ?!』
目の前にいるのが俺だと分かると、紡は驚きのあまり硬直している。
「だから、何やってんだ?」
今だに両手を伸ばした紡に、もう1度聞いてみる。
『い、岩泉先輩・・・』