第24章 孤独と絶望感
『言って・・・?』
清「営業スマイルしてみたら、どーぞどーぞ!って通してくれたから」
『営業スマイル?!・・・ですか?』
清「そう。菅原が、清水が行くならお邪魔しますって言って軽く営業スマイルしとけばすんなり通れるんじゃないか?・・・って言われたから、やってみたの」
た、確かに清水先輩に微笑まれたら・・・通せんぼなんて出来ないだろう。
こっそり青城のメンバーを見れば、ほらね・・・矢巾さんなんて清水先輩に釘付け。
『スガさん、男心を上手く利用したんですね・・・』
清「どうかしら。言われた通りにしてみただけだから」
ー 清水ー!!ゴメン、ちょっと頼む! ー
離れたところから、菅原先輩が清水先輩を呼ぶ。
清「全く、忙しない人達ね」
フッと息を吐き、清水先輩が立ち上がる。
『私は平気です。皆さんのお世話に行ってあげて下さい・・・何もお手伝い出来なくてごめんなさい・・・』
清「城戸さんの今の1番の仕事は、安静にしてる事よ?だから、心配いらない。ね?」
フワリと甘い香りを纏いながら、清水先輩は私を抱きしめてくれる。
私はその腕の中で、はい、と、ひとつ頷いた。
それから清水先輩は、溝口コーチや監督を始め、他の青城メンバーにもよろしくお願いしますと頭を下げながら烏野のベンチに帰って行った。
急に静かになる自分の周りが、凄く寂しいと思えた。
烏野は烏野で、青城は青城で。
それぞれが輪になって話をしている。
私は青城の輪から少し離れた椅子に座っていて、それがまた孤独感を募らせる。
はぁ・・・
目を閉じて、ため息をひとつ吐く。
『なんか寂しいなぁ・・・』
ポツリと漏らした言葉さえ、誰に届く事もない。
この寂しい感じ、熱を出して部屋に閉じこもってた、あの日と似てる。
あの時は、寂しくて、悲しくて、どこにもぶつけられない置いてきぼり感で泣いて過ごした。
でも、今は違う。
手を伸ばせば、みんながいる。
目を閉じたまま、そっと腕を伸ばしてみる。
ー 何やってんだ? ー
そう、何やってんだ?って言って、笑ってくれるみんなが、いる・・・
・・・・・・・・・・・・。
『えっ?!』
思いがけない声に驚き、勢いよく目を開ける。
いつの間にか私の目の前には影が落ちていて・・・
私はその正体を見て、全身が固まった。