第7章 嵐の足音
~岩泉side~
部屋の窓から、ボンヤリと空を眺める。
次々に落ちてくる雪を、ただジッと見ていた。
クリスマスという事もあってか、家族はそれぞれ浮き足立ちながら出かけている。
静まり返った空間を雪が埋め尽くすような、そんな無音の時間を過ごしていた。
・・・ふと、本棚を見ると、あの日から伏せたままの写真立てが目に入る。
俺は飲みかけのカップを置き、それをそっと手に取った。
アイツは、俺のことを恨んでいるだろうか・・・
暫くの間、写真の中で笑うアイツを見て、フッと息を吐くと再び元の場所に伏せた。
何もすることもなくベッドに転がる。
静かに流れる時計の音に混ざって、インターフォンの音が鳴った。
誰だよ、こんな時間に。
「はい」
応答すると、画面いっぱいに及川が写し出されていた。
« ハァ、ハァ、ハァ、ハァ »
どんだけ息切らしてんだよ、とため息をつきながら
「変態はお断りだ」
と言うと、慌てだした及川がオレだよ、と叫ぶ様に言った。
メンドクセーのが来たもんだと思いながらドアを開け、中に招き入れる。
「びしょ濡れで訪ねてくるとか、何の嫌がらせだよ・・・」
及川はまだ整いきれない呼吸をしながら立ちすくんだ。
「タオルもってくるから待っとけ」
そう言って、タオルを取りに行こうと及川に背を向けると、及川は大きく息を吐き俺に言った。
「今日・・・紡ちゃんに会ったよ・・・」
俺は、ざわついてくる思考回路を押さえつけながら、振り返りもせず、
「そうか・・・」
とだけ言ってタオルを取りに行った。
なんでアイツが及川と・・・
いや、アイツが誰とどこに行こうが、俺には関係ないじゃないか・・・
「ほらよ」
及川にタオルを放る。
及川は受け取りはしたものの、ポタポタと落ちる滴を拭く訳でもなく、タオルを握りしめている。
「風邪引いたらどうすんだ?サッサとふけよ。いまコーヒーでも入れるから。着替えは俺のでいいよな。サイズ変わんねーし」
「・・・いらない。着替えなんかいらない・・・」
はぁ?何言ってんだ?
ちょっとイラッとしながら及川を見た。
「おい、グズ川、」
「グズなのは岩ちゃんじゃないか!紡ちゃんに聞いたよ!いったいどういうことなんだよ!!!」
タオルを握りしめ、俺の言葉に被せるように及川が叫ぶ。