第23章 それぞれの誤算
大声を上げる影山の胸を押しやり、体をずらした。
『青城のコーチさん、大変ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします』
そのひと言で、チームのメンバーが驚きの声をあげた。
武「城戸さん、いいんですか?」
『はい、大丈夫です。同じ体育館の中なので、どこにいても仕事は出来ますし。それにこれ以上、ここに青城のコーチを留めておく訳には行きません。ケガをしたのも隠していたのも私です。青城のベンチで、これ以上ないくらいに反省してきます!』
みんなにも頭を深く下げ、すみませんでした!と謝った。
溝「反省なら、君はもうたくさんしてるんじゃないのかな?」
そう言ってくれる青城のコーチに、まだまだ足りないくらいですと答えた。
『学校戻ってから何回でも、土下座してでも謝ります・・・その時は武田先生?由緒正しい土下座の仕方を伝授して下さいね?』
武「・・・分かりました、伝授しましょう」
武田先生の言葉に、周りがクスリと笑いを漏らし、少しでも場が和むのが分かって胸を撫で下ろす気持ちになった。
『影山も、ずっと抱っこしてくれてありがとう』
影「アホ、抱っことか言うな!子供か!いや、子供だ・・・」
『王様酷い・・・』
影「王様って呼ぶな!」
私達のやり取りに、青城のコーチが思わず吹き出していた。
溝「では、症状が落ち着くまで、お預かりします」
武「あ、はい!よろしくお願いします!何かあれば声をかけて下さい。僕、走っていきますから。城戸さん、しっかり見て貰いなさい。分かりましたね?」
武田先生の言葉に大きく頷き、影山に離していいよと声をかけた。
澤「紡、立てるか?」
差し出してくれた澤村先輩の手を掴み、ゆっくり立ち上がった。
『よし、立てた。大地さん、ありがとうございます』
澤「お転婆娘もここまで来ると・・・本格的に嫁の貰い手がなくなるぞ?」
『じゃあ、今から可愛いお婆ちゃんを目標にします・・・』
澤「お転婆をどうにかする気はないって事なのね・・・」
わざとらしく肩を落として見せる澤村先輩に苦笑を返し、記録ノートを持ち、それじゃ行ってきますとみんなに背を向けた。
1歩前に進む度、目を閉じたくなる痛さが襲う。
溝「結構痛そうだな。歩けるのか?」
そう聞かれ、大丈夫ですと答えながらも痛さに瞼を閉じた。