第23章 それぞれの誤算
溝「う~ん・・・ちょっとゴメンね」
そう言って屈んだと思ったら、青城のコーチはひょいっと私を抱え上げた。
『え?あ、あの?!』
溝「これ以上悪化させるわけには行かないからね。さっきの影山みたいに若くないし、女子高生から見たらオジサンかも知れないけど・・・そこは我慢して?」
近い距離で笑う青城のコーチに、私は驚きを通り越して笑ってしまった。
『あの・・・青城のコーチさんは、おいくつですか?・・・あっ、急に変なこと聞いてすみません』
溝「その、青城のコーチさんっての長いからやめない?俺は溝口って言います。歳は31。な?オジサンだろ?」
痛みを感じさせないように、ゆっくり進みながら溝口コーチが笑う。
『そうですか?でもその持論だと武田先生もオジサンの仲間入りになってしまうから、変な感じがします・・・』
流れで自分の名前も教えながら、そう答えると
、え?!あの先生いくつなの?!なんて驚かれた。
『武田先生は、教師になって7年目って言ってたので・・・29歳?ですかね?』
そう答えると、もっと下かと思ったよ・・・なんて笑っていた。
『でも、私の兄もたいして変わらないので、そうすると兄もオジサン?・・・なんか複雑な心境・・・』
溝「はははっ、城戸さんは面白い子だな。烏野部員達から愛される理由が分かったよ」
『あ、愛?!』
溝「そう。君は大事にされてるねって。抱え上げた時から、俺は背中に刺さる視線が痛いよ」
視線?
言われて初めて、溝口コーチの肩越しにそっと烏野メンバーを覗き見てみる。
・・・・・・・・・。
なんか・・・。
『メチャクチャこっち見てる・・・』
溝「だろ?きっと彼らは、俺が城戸さんを攫って行ったと思ってるよ」
『いや、そんな事は・・・』
溝「ま、彼らを早く安心させるためにも、大人しくしてなさい」
『・・・はい。おとなしくするの、頑張ります』
なんだよそれ、と笑いながらゆっくり進んでくれる。
私はその揺れに甘えながら、これから先の試合の事を考えていた。