第23章 それぞれの誤算
武田先生が青城のコーチを連れて戻って来てから、私の足を見て貰って・・・
私の想像以上に悪化してる事を聞いて、後悔ばかりが押し寄せる。
こんなはずじゃなかった・・・
こんなつもりじゃなかった・・・
そんな言葉ばかりが繰り返し浮かび、みんなの顔を見る事さえ怖くなって俯く。
だから、みんながどんな顔して私を見てるのかも、怖い。
怒ってる?
呆れてる?
誰かのため息さえ、責められているような気がして耳を塞ぎたくなる。
なのに・・・
溝「ここでいろいろやるより、うちのベンチに連れていった方が目が届くし、記録付けならどこでも出来るんじゃないかな」
えっ・・・?!
予想外の言葉に私は混乱した。
私が?!
青城のベンチに?!
青城のコーチの言葉に、武田先生も判断を迷っているのか言葉に詰まっていた。
理由はどうであれ、不注意でケガをしたのは私。
みんなに迷惑をかけているのも、私。
出来れば、向こうのベンチには行きたくはない。
だけど・・・
『影山あのさ?』
影「なんだ?痛むのか?」
小さく影山を呼ぶと、ケガが痛くて声がかけられたのかと思われ、同じように小さく返される。
『あはは・・・気を抜いたからなのか、痛いのは結構痛いかも。足首にも心臓があるみたいにドクドク言ってる』
影「お前それ・・・相当痛いヤツじゃねぇか。ガマンするにも程があんだろ、ったく」
ぶっきらぼうに言う影山に、ゴメンと返して、お願い聞いて?と言うと訝しげな顔をされた。
『3秒だけでいいから、私に時間ちょうだい?あと、耳貸して?』
影「3秒?なに?別にいいけど・・・」
言いながら少し影山が前かがみになるのを感じて、私はそっと影山の背中に腕を回しギュッと抱き着いた。
影「な・・・お前っ!」
1・・・2・・・3・・・。
頭の中で3秒数えながら鼓動を感じて、狼狽える影山の体をゆっくり解放した。
影「こんな時に何してんだよ・・・ビックリすんだろが!」
ポソポソと小さい声で影山がボゲェ!と私に言う。
『こんな時だから、影山の鉄骨の精神を分けて貰いたかったの!あと、早く耳貸して』
半ば嫌そうな影山の頭を引き寄せ、内緒話が出来る距離を作った。
『城戸 紡、正々堂々、敵陣に乗り込んで参ります』
影「は、はぁ?!お前何言ってんだ?!」