第23章 それぞれの誤算
~影山side~
コイツ・・・ここに来てから誰とも目を合わせない。
それに、誰が何を聞いても、痛くない、大丈夫だ、の一点張りだ。
だいたい何で足を痛めてることを隠していた?
普段は誰かのケガには人一倍敏感に対応するクセに。
はぁ・・・何考えてんだよ。
『影山・・・』
「あ?」
小さく小さく俺を呼びながら、もそもそと城戸が動く。
『ゴメン・・・』
さっきと変わらず、誰とも目を合わさないまま城戸がポツリと言った。
「そんなの、後で死ぬほど言わせてやる。俺だけじゃなくて、全員にな」
『・・・うん。そうする・・・』
城戸の性格からして、今は後悔と反省で自分を責めてんだろ。
だから、誰とも目を合わせない。
・・・合わせられない、の方が正しいのか。
武「皆さんお待たせしました。青城の溝口コーチに城戸さんを見て頂ける事になりました。すみません、宜しくお願いします」
武田先生に言われ、青城のコーチが前に出る。
さすがに大人が出てくると城戸も諦めたのか、顔を上げて、すみません・・・と頭を下げる。
溝「君はさっきの・・・」
抱えられてる城戸を見て一瞬驚いた顔をした青城のコーチは、そのまま澤村さんの隣に腰を降ろした。
澤「すみません・・・俺達ではちょっと判断が難しかったので」
言いながら澤村さんが場所を開けると、青城のコーチは、そんな事は気にするな、と澤村さんの肩を叩いた。
溝「じゃ、ちょっと見せてもらうね。足を前に出して?」
言われるままに城戸がそっと足を持ち上げ、前に出した。
城戸の足首を掴み、少しずつ動かしながら可動域を調べていく様子を、俺達は黙って見ていた。
動かしたあと、足首、足の甲、内側のくるぶし付近や踵を、ここは?などと聞きながら順に指先で触って行く。
『・・・痛っ・・・』
指先が腫れの酷い場所を触れた時、城戸が体をピクリとさせ声を漏らした。
溝「っと、ゴメンな。ここが1番痛そうだね・・・う~ん・・・どうしようかな・・・」
武「あの・・・重症な感じですか?」
一緒に腰を降ろしていた武田先生が、真剣な眼差しで聞いた。
溝「重症か?と言えば、それなりに・・・ですね。なんせ腫れが酷いし、熱を持ってる。よくここまで黙っていられたものだと思いますよ」
菅「え、まさか骨折・・・とか?」