第23章 それぞれの誤算
どう?って言葉を含めた視線を、菅原先輩が私に送り、私はニコリと頷いた。
『山口君、さっき私も混ざってコート練習したでしょ?多分、そう言うのを見ていたから私を使ったんだと思う。ホントなら揺さぶりかけるなら、チームの司令塔になるセッターとか、その日に調子よく動けてるスパイカーにするんだけど・・・』
菅「そのセッターの影山はそうそう崩せない、増してや田中はあんなだし」
ウンザリ顔の菅原先輩が、いまスパイクを決めたばかりの雄叫びを上げる田中先輩を見た。
『残念ながら、影山の精神は鉄骨で何重にも組み立てられてるから半端な事じゃ折れないからねぇ。だからこそ、今ここで使えるアイテムとしたら・・・私。だったんだと思う。負けないけど』
最後に付け加えて笑うと、菅原先輩や山口君もつられて笑った。
ー ピッ! ー
また得点出来た!
影山が上手くブロックを分散させて、烏野も得点が上がってくる。
澤村先輩や縁下先輩、それに月島君は元々心配いらないし、田中先輩も絶好調。
それになりより、日向君のスパイクも決まって来てる。
このまま安定して行けたら・・・このセット、取れる!
ー ピーッ! ー
ここで青城がタイム?!
流れを変えられたら・・・烏野に影響が出てしまうかも知れない。
清「城戸さん、ドリンクとタオル行こう」
清水先輩に声をかけられ、コートから戻ってくるみんなに手分けして配る。
日向君のスクイズを掴み、渡そうと振り返ると、まだ、戻ってくる気配はしなかった。
みんながベンチに戻って来てるのに、日向君はコートの中で手を見つめて動かない。
澤「どうした日向?」
・・・まさか、ケガ?!
私は慌てて救急セットを掴み、側へと駆け寄った。
日「オレ、初めて試合出た時は・・・全部自分でちゃんとやらなきゃって思ってて」
・・・日向君?
ジッと手を見つめながらポツリと話し出す日向君の言葉に、私は足を止めて耳を傾けた。
日「でも今は、オレよりずーっと上手い選手が周りにいるから、今のオレに出来るのは・・・信じて飛ぶことだけですよね!・・・ごちゃごちゃ考えなくて、よかったんですよね!」
日向君はそう言って、澤村先輩に満面の笑顔を見せて私からスクイズを受け取ると、みんなのいるベンチへと元気よく駆け出して行った。
澤「あ、日向?」
1つ呟いて、澤村先輩が笑う。