第23章 それぞれの誤算
きっと同じ中学出身の青城メンバーだって戸惑ってるはず。
【 コート上の王様 】
【 自己中の王様 】
【 横暴な独裁者 】
どの異名もみんな、当時の北川第一のチームメイトが影で名付けた異名。
その異名は隣で練習している女子部にもすぐ伝わって来て、影山が孤立していくのが目に見えて分かった。
それに日向君だって。
烏野に来るまでは、どんなに大きな翼を持っていても、それを羽ばたかせるあと1つの物が手に入らなかった。
でも。
今は違う。
影山は羽ばたかせる力を、日向君は安心して羽ばたく事が出来る力を手に入れた。
お互いが欲しかったものが、いろんな巡り合わせの中、遠回りして、遠回りして、出会った。
だからこそ、私には2人がキラキラして見える。
ー ピッ! ー
田「どーだ!ラッキョ君!試合で見てみろって言ったろー!!」
日「うぅ・・・オレ打つ気満々で、なんだとーとか叫んじゃったよ・・・恥ずかしー・・・」
影「いいんだよ、それで。お前が本気で飛ぶから、相手もつられて飛ぶんだろ」
日「・・・そういうもん??」
影「そういうもんだ」
日向君の武器の1つは、相手を惑わせるおとり。
誰もが日向君にトスが上がる!そう思わせる事が出来てこそ、得点へ繋がる。
青城チームを引っ掻き回して、惑わせて、得点稼いで、こっち側のチームがまとまって行くんだから。
金「チッ!・・・あ・・・」
っと・・・
マジマジと見過ぎて金田一君と目が合っちゃったよ・・・
とりあえず変に無視するのも出来ないから、小さくニコリと返しておく。
岩「焦んなよ金田一。こっちの攻撃だって、ちゃんと決まってる・・・飲まれるな」
金「はい!」
・・・的確なフォロー、冷静な言葉。
やっぱり・・・カッコよすぎるよ、岩泉先輩。
岩「それから城戸・・・」
『ひゃい!!』
予期せぬ呼びかけに、思わずおかしな声が出てしまい口を押さえる。
岩「お前、こっち側見過ぎ」
『えっ?!あ、えと、見過ぎって言われても、それが私の仕事・・・なんですけど・・・』
岩「仕事?とにかく見過ぎ」
ゲーム記録と、対戦相手の情報を・・・って澤村先輩に言われてるから、そんなこと指摘されても・・・なぁ・・・
チラリと烏野側のコートを見ると、揃ってコッチの様子を伺っている。
・・・なるほどね。