第23章 それぞれの誤算
『うにゃぁぁ!!』
田中先輩がガッツリと私を閉じ込めて、勢いと焦りと怖さで思わず悲鳴をあげる。
そんな私の口を手で押さえ、田中先輩が間近で説得してきた。
田「お嬢、ここは俺達の戦場だ。故に、お静かに・・・」
田中先輩の迫力に押されて、コクコクと頷く事しか出来なかった。
澤「何やってんだ田中お前は!無駄に怖がらせるな!」
縁「そんなに拘束してお前は誘拐犯かっ!」
ほぼ同時に澤村先輩と縁下先輩が突っ込みをいれ、澤村先輩が田中先輩を引き剥がし、縁下先輩が私を保護してくれた。
澤村先輩はズルズルと田中先輩を引きずりながらコートに戻し、そこから動くな!などとお説教を始めていた。
元々が強面の田中先輩だから、あんな凄い勢いで来られると・・・悪い人じゃないと分かっていても、ビックリしちゃうよ・・・
私は安堵のため息を吐き、足の痛みもあって縁下先輩に寄りかかった。
縁「城戸さん大丈夫?・・・全く田中は、ホントどうしようもないヤツ。でも、もう成敗したから心配いらないよ?」
『成敗って。田中先輩は鬼ですか・・・』
縁「似たようなもんだろ?」
そう言ってニコリと笑う縁下先輩に、私も笑って返した。
澤「縁下もそろそろ戻れ。向こうのベンチ、話し合い終わったみたいだ」
縁「はい、分かりました。じゃ、俺は戻るね?」
『あ、待って下さい。・・・はい、縁下先輩もおまじない』
軽めにそっと背中に手を回す。
『縁下先輩、冷静な縁下先輩がカットミス・・・とか、ナシですよ?』
少し笑って体を離す。
縁「了解」
ポンッと1つ、私の頭に手を乗せて縁下先輩が笑った。
澤「そう言えば前に、スガが勝利の女神・・・とか言ってたよな。じゃ、折角だから俺もあやかっとくかな?」
『え?』
澤「えっ?ダメなの?」
『ダメじゃないですけど・・・大地さんはさっきいっぱい、』
言いかけたところで澤村先輩が、わーっ!と声を出し、有無を言わさずに私を腕に閉じ込めた。
澤「それここで言っちゃったらアウトでしょ!俺もいろいろアウトだけど、紡が泣いたのもバレるからっ」
耳元で小さく言われ、そうでした・・・と返す。
『大地さんのレシーブ、かっこよくて好きです。だから、絶対落とさないで下さいね』
澤「真正面から好きですって言われると、照れるな・・・」
『レシーブですよ。レシーブ!』