第23章 それぞれの誤算
暗くなって家まで送りながら、進路がどうのとか、夕飯なんだろうとか、そんなに話ばっかしてて。
『私さ、家から適当に歩いて行ける高校にしようと思ってて・・・』
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あの時、紡からそんな言葉が出て、紡の家から適当に歩いて行けるって・・・この辺じゃ烏野しかなくね?って思ったんだよな。
だから金田一から城戸が烏野にいたって聞いても、別に驚かなかったんだ。
そう言えば、あれから少し経って、風の噂で岩泉さんと紡は夏の終わり位に別れたらしいってどっかから聞いた金田一が騒いでて。
・・・じゃ、あの公園の時は、既に別れた後だったのか。
だったらあの時、ホントにキス位しといたら今頃俺達の関係も変わってたのかな?とか勝手に思ったりしてて。
ボンヤリとそんな事を考えながら、烏野のベンチを見ると、紡がメンバー達と無邪気に笑っていた。
さっきの烏野の練習に混ざってた時もそうだったけど、楽しそうに笑ってる・・・
アイツのあんな楽しそうな顔、久しぶりに見たな・・・
ー ・・・見。おい国見! ー
「はい!あ、岩泉さん・・・」
岩「岩泉さんじゃねぇよ、ボーッとしてんな!今は練習とはいえ試合中だぞ!」
・・・誰のせいだよ・・・と心の奥で呟いてみる。
岩「無気力なのは部活以外の時だけにしとけ」
「はい、すんません・・・」
金「プッ、怒られてやんの・・・痛っ」
からかってくる金田一の脇腹にパンチをお見舞いし、列の中に入る。
監督と溝口コーチが、烏野はあーだの、こーだのと対策を話してるけど、たいして耳に入らない。
俺はまた、上の空になりながら楽しそうに笑う紡を見ていた。