第23章 それぞれの誤算
紡は顔を真っ赤にさせながら、硬直していた。
「なに、そんなに真っ赤になってんの?お前だって、その、彼氏いるんだからキス位した事あるだろ?そんくらい」
言いながら、胸が痛むのは何でだろう。
でもその答えは、俺が1番分かってる。
俺は・・・コイツが好きだから・・・
中学入って同じクラスで、一目惚れってヤツで。
部活もバレー部だったから、その話題ですぐ仲良くなれて・・・でも、紡が選んだのは・・・
そう思うと、俺も片思い歴、長いよなぁ。
どうせ手に入らないならって、2人ほど彼女いた事あったけど、付き合ってみると何かイマイチ噛み合わなくて。
バレーの話をすれば、ゴメン、話が分からないなんて言われたら会話が止まるし。
ー 英君、ホントに私のこと好きだって思ってる?・・・なんかいつも、違う誰かの事・・・考えてる気がする・・・ ー
とか?
ー 国見君カッコイイけど、付き合ってみたら何か違う。無気力過ぎてつまんない。私と一緒にいても、退屈そうだし ー
とか?
そんな理由ばっかで、結局そいつらとはすぐ終わった。
別れた後、いろいろ陰口叩かれたけど、それは仕方ない。
実際、部活も忙しかったし、それ以外は岩泉さんの隣で笑う紡で、頭ん中がいっぱいだったしな。
『・・・ないもん・・・そんな事、した事ない・・・』
「え?」
『誰ともそんな事、したことない・・・』
「・・・・・・・・・はぁぁぁぁ?!?!」
息をするのも忘れるくらい驚いた。
「お、お前!1年以上も付き合っててか?キスした事もないとかマジか?!」
『ちょっ、国見ちゃん声大きいよ!』
「だってお前!」
咄嗟に紡に口を押さえられモゴモゴしながらも、驚かずにはいられなかった。
1年以上付き合っててキスもなしって、岩泉さん何考えてんだよ!
手ぇ出さないのが大事にしてる証拠だとか?!
硬派な所がカッコイイってのは俺も分かるけど!
及川さんだったら、きっとその日のうちにそんくらいかましてんだろっ?
『と、とにかく!そういうのはないから!以上!』
「以上!って、何の報告会議だよ・・・」
紡のひと言で脱力する。
『だって国見ちゃんが、変な事ばっか言うから』
俺かよ!勢いでそう返して、何となくお互い笑い出した。
その後は、それきりその話題には触れなかったけど。