第23章 それぞれの誤算
少し走って公園の中にある小高い丘の上まで来て、紡を解放した。
「紡、たいした距離走ってないのに息切らすとか、体力落ちたんじゃない?」
『ち、違うよ国見ちゃん・・・私と、国見ちゃんの体格差、考えてよ』
はぁはぁと息を切らしながら返してくる紡を見て、俺は笑った。
「あ~ハイハイ、すみませんね、足が長くて」
『えっ・・・』
軽い気持ちでそう言ったのに、なぜだか紡は瞳を揺らして驚いていた。
「・・・なに?」
紡の驚きように、そう聞いてみても、紡は別に何でもないって言って俯いた。
「とりあえず、そこ座ろう。ってか、走ったら喉乾いたからなんか買ってくるわ」
『あ、私も行く』
「2人で行って戻ってきた時、誰か座ってたら困るだろ?俺が行ってくるから待ってろよ」
『じゃあ、お金渡すから』
そう言ってくる紡をベンチに座らせ、そんなもんいらないよと答えた。
「こういう時は、黙って奢られとけ。じゃ行ってくるから」
そう言って自販機に向かい、戻って来た時。
俺は立ち尽くした・・・
なんで紡、泣いてるんだ・・・?
ベンチに1人ポツンと座り、そこから見える景色を見るわけでもなく、ただ、正面を向いて・・・
どう声をかけようか、迷って足を踏み出した時、ジャリ・・・っと足元が鳴る。
それに気付いて紡はこっちを見て、慌てて目を擦った。
「お前、ぼっちになったからって泣いてんなよ」
そう言うのが、精一杯だった。
『泣いてないよ。ちょっと目にゴミが入っただけ』
いや、絶対泣いてただろ。
「ま、いーけど。はいコレ、ミルクティー好きなんだろ?」
『ありがとう国見ちゃん』
「あとこれ、半分こな」
目の前にアイスの袋をチラつかせると、紡は寒いのに?なんて笑い出した。
「今時めずらしいだろ?半分こ出来るアイス。真ん中で割って、それぞれに棒がついてんだよ。はいよ」
袋の上から半分に割り、その内の1本を渡すと紡は物珍しそうに眺めながら食べていた。
「あのさ、何をそんなに思い詰めてんのか分かんないけど・・・誰かに話してスッキリする事だってあるじゃね?」
紡の顔も見ず、ベンチに寄りかかって呟いた。
・・・紡からの返事は、なしか。
「アホ金田一だってギャーギャーうるさいし?」
『え?・・・金太郎が?』