第23章 それぞれの誤算
~国見side~
スクイズに口を付けながら、烏野のベンチを見る。
紡はホントに烏野に行ったんだな・・・と改めて思った。
金田一が矢巾さんと戻ってきた時、金田一から烏野に城戸がいた!って言われた時、驚くより先に、あぁやっぱりそうなんだ・・・って思った。
・・・中学の放課後の進路相談の時、俺の前が紡の番で、終わるのを待っている間に掻い摘んで聞こえてたから・・・
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ー で、城戸はどうしたいんだ?このままいつまでも進路が決まらないのは困るだろう? ー
ため息を吐きながら、担任が言った。
ー 城戸は成績も全く問題ないし、バレー部の推薦だって条件がいい物がいくつも来てる。この先もバレーを続けるなら、その中から選んでも勉強が追いつかないって事はない。・・・考えてみないか? ー
担任から成績全く問題なしって太鼓判押されるって、どんだけだよ。
確かにアイツ、成績いいしな・・・
うっすら聞こえてくる担任の話に、俺は羨ましい事だ、なんて考えていた。
『先生、私・・・この先バレーボール、出来なくていいです・・・』
静まり返った相談室の中から聞こえた紡の言葉は、担任はもちろん、俺さえも絶句させた。
バレーボール出来なくていいって、どういう事だよ?
あんなにチビッ子で、スパイクもブロックも出来ないからって言いながらも、リベロとして楽しそうにプレーしたり、部の都合でいきなりセッターにポジション変えられたりしても、お荷物になりたくはないって言って及川さんや岩泉さんに個人練習して貰ってた、お前が?!
・・・ウソだろ?
俺の聞き間違いだろ?
ー それは、ご両親とも話し合っての事なのか? ー
『いえ・・・それはまだ、何も・・・』
ー それじゃあ、今日の進路相談はここまでだ。ちゃんとどうするか、家の人と話し合って結果を出しなさい。出来れば早めに。分かったね? ー
『・・・・・・はい・・・』
その言葉を最後に紡は部屋から出て来て、長引いちゃってゴメンネなんて言い残して教室に戻って行った。
その後、俺が進路相談から解放されて教室に戻ると、紡は誰もいない教室で日直当番の日誌を書いていた。
「まだ残ってたのかよ?」
俺が教室に入りながら声をかけると、紡はビクッと体を震わせ顔を上げた。
『国見ちゃんか・・・ビックリした・・・』