第23章 それぞれの誤算
そんなもんですか?と、また笑った。
『じゃあ、大地さんって呼ぶのやめて澤村先輩って呼ぶのに戻しますか?』
私がそう提案すると、澤村先輩はゆっくり瞬きをして、戻さなくていいよ、と言った。
澤「せっかく呼ばれ慣れたし、俺も呼び慣れたんだからさ。それに紡だって、時期が来れば城戸先輩とか、紡先輩とか呼ばれるようになるよ」
でもそれは、ここにいれば・・・の話ですよね?と言いかけて、やめた。
菅「あぁもぅ!その感じ!その妙にラブラブLIFEな感じやめて!だいたい大地はズルいよな、ある日突然、紡ちゃんの事を呼び捨てとかさ」
拗ねたように菅原先輩がボヤき始めた。
『でも菅原先輩は、多分・・・最初っから私を名前呼びでしたよね?』
澤「そうそう、スガはそうだったな」
菅「でも、紡ちゃんは菅原先輩のまんまじゃん?」
『まぁ、そうですけど・・・それじゃ大地さんみたいに名前で呼んだ方が良いですか?えっと・・・孝、』
菅「待っ、ストップ!」
菅原先輩の名前を呼びかけた時、そう言いながら手のひらで口を覆われた。
菅「えっと、あのさ。やっぱいい。やっぱりそう言うのは、大事な時になったらにする」
大事な時って、なんだろうと考えながらコクコクと頷いた。
大きな試合で応援する時?位にしか思いつかないけど。
菅「その変わりさ、オレは今まで通り紡ちゃんって呼ぶから、紡ちゃんもみんなみたいにスガさん!とか呼んでよ?」
『菅原先輩がそう言うなら、いいですよ?・・・えっと、スガさん?』
言われたように呼ぶと、菅原先輩はちょっと嬉しそうに、もう1回、もう1回とねだるから、私もそれに答えてスガさん、と呼んでいた。
澤「スガ・・・お前それじゃ田中と何も変わらないな」
澤村先輩が少し呆れながら言って、私もそれに笑って答えた。
澤「よし、2セット目が始まる。日向の緊張も何とかなりそうだし・・・このセット、気合い入れて行かないとな」
『頑張って下さい!私は記録の方をバッチリ取りますから!』
そう言ってタオルとスクイズを回収し、みんなをコートに送り出した。
このセット取れたら、もう1回試合が出来る。
そしたら、みんなが青城から得られる物も増える。
みんな、頑張って・・・
そう願う事で、私は足の痛みを紛らわせていた・・・