第23章 それぞれの誤算
田「おーい!!ナメんなよ?お前がヘタクソな事なんか分かりきってる事だろうが!!分かってていれてんだろ、大地さんは!」
澤「えっ?」
『違うんですか?』
思わぬタイミングで名前が出た澤村先輩が驚き、私は思わず問いかける。
澤「あ、あぁ、いや、まぁ・・・はは・・・」
田「交代させられた時のことはなぁ!交代させられた時に考えろ!!」
武「・・・助けなくて平気?」
田中先輩の勢いに驚いた武田先生が、ポツリと菅原先輩に聞く。
菅「あ、はい・・・多分、大丈夫です」
見た目からして強面の田中先輩が、ああやって詰め寄っていたら誰だって何事かと心配するよね・・・
私だって初めて体育館言った時に何のようだとか言われた時は、ちょっとだけ引いたもん。
田「いいか、バレーボールっつうのはな!ネットのコッチ側にいる全員、もれなく味方なんだよ!!ヘタクソ上等!迷惑かけろ!足を引っ張れ!・・・それを補ってやる為の、チームであり、先輩だ!!」
日「おおおっ・・・!!」
田「ホレ・・・田中先輩と呼べー!!」
日「た、田中先輩!!」
田中先輩は何度も先輩と呼べを繰り返し、日向君もそれに答えて田中先輩と呼ぶ。
菅「先輩って呼ばれたいだけだな」
澤「あぁ・・・でも田中がいてくれて助かった。ああいう事は、絶対裏表なさそうなヤツが言うから効果があるんだよな」
澤村先輩が腕組をしながらそう返す。
菅「でもさすがに連呼しすぎだべ・・・」
ため息混じりに菅原先輩がこぼすのを見て私たちは笑い合った。
『大地さんも菅原先輩も、先輩って呼ばれると、あんな風に嬉しかったですか?』
オレ達?と菅原先輩が首を傾げた。
澤「まぁ、あそこまでじゃないけどね。1年間頑張って来て良かった、新部員が入ったから俺達も先輩になるのかって」
菅「そうそう!そんな感じ!で、他の誰より体育館飛び込んできたのが・・・田中なんだけどねぇ」
菅原先輩が遠くを見るような目で言って、つい笑ってしまう。
『田中先輩、私はずっと田中先輩って呼んでるのになぁ。やっぱり同じ部員から呼ばれるのと、たかだかお手伝いマネから呼ばれるのじゃ違うんですかね』
澤「そんな事ないだろ?少なくとも俺は、先輩よりさん付けの方が多いから、嬉しかったよ?」
菅「あ、オレもオレも!なんか新鮮だったよなー」