第23章 それぞれの誤算
影山はそれだけ言うと、くるりと踵を返しコートに戻ろうと動き出した。
日「あれ?今のヘマはセーフ?」
その影山を見て日向君は拍子抜けしたのか、瞬きを繰り返しながら影山に言葉を投げた。
影「あ?!何の話だ!」
日「いや別に・・・」
やっと2人が整列に加わって、審判が1セット終了を告げた。
菅「はぁ~・・・、影山はさっき、よく堪えたなぁ。絶対ケンカし始めると思って、内心ヒヤヒヤしたよ」
『・・・ですよね。私もそう思って止めに入ろうかと思いましたから』
菅原先輩にそう返しながら、椅子から立ち上がる。
っ痛・・・
間違いなく捻ったな・・・
痛みが強くなる前に何とかしないと。
清「戻った来た。城戸さん、タオルとドリンク配りましょう」
『はい!』
私は用意してあるタオルとドリンクを抱え、清水先輩と手分けしてみんなに配り歩いた。
『あ!影山、頭大丈夫?!』
縁「ぶっ・・・ゴホッゴホッゴホッ・・・」
私が影山に声をかけると、横でドリンクを飲んでいた縁下先輩が吹き出し、むせていた。
影「あぁ?!」
『だから、頭大丈夫??って?頭冷やす?』
なんで怒るんだろうと思いながら、もう1度聞く。
影「うるせぇ!俺は至って正常だ!!」
『何で怒るのよ!私はただ、影山の頭が大丈夫か聞いてるだけなのに!』
何なのよ、もぅ、と息を吐くと、縁下先輩がタオルで口元を押さえながら私の肩を叩いた。
縁「城戸さん?たぶん影山は勘違いしてる」
『勘違い?』
縁「うん。城戸さんが頭大丈夫って言ったのを、頭の中は大丈夫か?って言われたのと勘違いしてるんじゃないかな?・・・くっ・・・」
縁下先輩は言い終わるとまた肩を震わせ始めた。
頭大丈夫?と頭ん中大丈夫?では大きな違いがある。
それを縁下先輩に指摘されて気がついた時には既に遅く、周りを見渡すと、みんな横を向いたり俯いたりしながら笑いを堪えているようだった。
『あ~、っと・・・影山?なんか変な言い方しちゃってゴメンネ?』
影「あ?」
『私が聞いたのは後頭部サーブの方で、中身の方は今更だから心配いらないよね?』
私がニヤリとしながら言うと、影山は一瞬口をパクつかせた。
影「・・・余計なお世話だ!!」
影山のひと声で周りは笑いだし、影山は不機嫌さを増してしまった。