第22章 終わりと始まり
静かに、低い声色で言いながら、影山はいつもの様に私の頭を鷲掴みして顔を近付けて来る。
『お、教わった、かな?って、痛たたっ、痛いって、影山!それに顔近っ・・・』
体を押し戻そうとすると、影山は更に距離を縮めて来た。
影「お前、岩泉さんを意識し過ぎ。ビクつかねぇで堂々としてろ、バーーーーカ」
『なっ!ば、バカってなによ!!』
耳元でポソッと言う影山に言い返しながら顔を上げると、思った以上に近い距離にお互い硬直した。
影「・・・・・・」
『・・・・・・』
影「ばっ、近ぇんだよボゲェ!!」
パッと顔を背けながら影山は掴んでいる私の頭をネットにグイッと押し退けた。
『痛いってば影山!頭取れる!』
澤「2人ともいい加減にしなさい!!」
様子を見ていた澤村先輩のひと声で、影山は手を離しベンチへと戻って行った。
菅「ほら、紡ちゃんも。ミスなんて誰にだってあるし、気にしない気にしない!」
ポンッと肩を叩きながら、菅原先輩もベンチへとかけていく。
私はため息を1つこぼし、みんなの所へ戻ろうと前に進もうとした。
ん?
・・・んん?
前に進みたいのに、頭が着いてこない?
何気なく頭に手を伸ばすと、さっきの影山の一撃で髪やバレッタがネットに絡まっていた。
誰かに・・・と思っても、コートの中には誰もいなくなっていて、ポツンと私ひとりが残されている。
・・・仕方ない、自力で何とかするしかない。
後ろ手で頑張ってみても、なかなか上手く取れない。
ネットの向こう側には人の気配がするけど、青城の人には頼めないし、どうしよう。
でもこの際仕方ない。
澤「紡?どうかした?」
『大地さん・・・』
誰も呼べない状況に諦めかけて青城の人に声をかけようと腹を括ったタイミングで、大地さんが走ってきた。
澤「紡だけなかなか来ないから、どうしたのかと思ってさ」
『それなんですけど、実は・・・』
私はここから動けない状況を説明すると、澤村先輩は、そんな事なら誰か呼べば良かったのにと笑い、俺が取ってあげるからと正面に立った。
澤「あら、結構絡まってるね」
『あの、大地さん?取って貰ってるのに何ですけど・・・後ろからの方が見えるのでは?』
正面から私を挟んで絡まりを取るより、その方が・・・と提案してみる。
澤「俺からは見えてるから平気」