第22章 終わりと始まり
ー ピピピピピピッ ー
清水先輩がセットしたタイマーが鳴り、サーブ練習の終わりを告げた。
澤「残り時間、全員打ち込み!トスは紡に頼むから影山とスガも打ち込みの方に入ってくれ」
菅「オレと影山も?」
菅原先輩がそう言いながら、影山と顔を合わせて不思議そうにする。
影山なんて、あからさまに納得行かない顔してるし。
『・・・菅原先輩は、私の上げるトスじゃ・・・嫌なんですね・・・』
わざとらしく顔を両手で隠し、ヨロヨロとしながら言う。
菅「やっ、違うって!そういう意味じゃなくて!」
慌てる菅原先輩がおかしくて、スグに嘘泣きだとバラすと、騙されたぁ!!と大げさに笑い出す。
『じゃ、時間も勿体ないし始めましょうか大地さん?』
そう笑いながら言うと、澤村先輩もみんなに声をかけてコートに入った。
部員のみんなが次々にボールを放っては、私がトスをあげ、スパイクを打ち込んで行く。
もう、何巡目だろう。
それぞれの打ちやすい場所へとトスを上げ続けながら、チラッとタイマーの残り時間を確認する。
・・・あと、30秒。
縁下先輩に上げ、月島君に上げ、時間的にラストは山口君かな?
と、山口君にトスをあげてスパイクを見送った時、視界の隅にあの人の姿が移り込む。
思わず目を閉じ、タイマーが鳴るのを待ってしまった。
菅「ラスト影山!」
えっ?!
終わりだと思ってたところに影山がボールを放って来る。
マズイ、タイミングがっ!
慌てて両手を伸ばしても、指先でちょこっと押し出すくらいしかボールを上げることが出来ず、それは影山に届くこともなく虚しく弾む音が鳴るだけだった。
影山は片手でボールを掴み、月島君にも負けず劣らずの不機嫌な顔で私を凝視する。
『し、失敗しちゃった・・・ゴメン・・・』
ジワジワとにじり寄ってくる影山から逃げるように後ろに下がる。
影「お前・・・ナメてんのか?」
『そうじゃなくて・・・』
1歩、また1歩と下がっていくも、やがてネット際まで辿り着いてしまい、逃げ道がなくなってしまった。
影「城戸、いま何考えてた」
まさか目を閉じてたなんて言える訳もなく、答えようがない影山からの言葉に視線を逸らすことで精一杯だった。
影「どんな時でも、セッターは冷静に周りを見ろって教わらなかったか?」