第22章 終わりと始まり
『いえ、そうじゃなくてですね・・・』
澤「それに、青城がコート入り始めてるし、2人して背中向けてたら危ないしね」
それもそうなんだけど・・・
こう距離が近いと、何というか・・・さっきの事を思い出して恥ずかしくなる・・・
『あの大地さん、やっぱり、その、距離が近いと言うか・・・』
軽く押し返すように手を出して、モゴモゴと伝えてみる。
澤「これは役得だよ。それに、さっきは距離感ゼロだったし?」
『そ、そういう意地悪なこと言うと・・・泣きますよ?』
澤「俺が泣かしたら、大騒ぎになるな・・・っと、あと少しで取れるよ。ちょっと背伸びとか出来る?」
『背伸び?・・・こう、ですか?』
頭がネットにくっついてるから、バランスが上手く取れずに、背伸びと言ってもほんとに少しの高さにしかならなかった。
澤「ん~、もうちょいかな」
『でも、これ以上はバランスが・・・』
澤「ん?俺に掴まってていいから」
そう言われ、仕方なくキュッとつかまり背伸びをした。
菅「あーーー!!!ちょっと大地!紡ちゃんとイチャイチャすんなー!羨ましいだろ!って清水!!」
菅原先輩の叫びに交え、スパーンという音が鳴り響く。
私からは見えないけど、向こうで何が起きたのかはそれだけでわかった。
『イチャイチャって・・・』
澤「スガはホントに紡がお気に入りだからね・・・よし、はい取れた!」
暫く拘束されていた頭がふわっと軽くなり、サイドを上げていた髪がはらりと落ちた。
『ありがとうございます!ほんとどうしようかと思ってたので』
澤「髪が切れたりしなくて良かったよ。でもゴメン、髪留め外しちゃったから乱れちゃったね」
言いながら澤村先輩が髪を手で梳いて直してくれる。
それがくすぐったくて、思わず首を竦めた。
澤「よし!これから試合開始だから、気合い入れないとな!」
『ですね!私はコートに入れないけど、出来ることは頑張ります!』
頼もしいな・・・と言って、澤村先輩が背中を押した。
『烏野?なんて言われるのは、今日で終わりにしましょう。大地さん達は、カラフルなコート目指して突き進むんでしょう?』
私が言うと、澤村先輩はもちろん!と笑顔で返す。
澤「その時、紡は一緒にいるのかな?」
ポツリと漏らす澤村先輩の言葉が、不思議と暖かく感じて、小さく笑って返した。