第22章 終わりと始まり
~岩泉side~
紡を探しに来た烏野の主将といくつかの言葉を交わし、じゃあ後はコートで、と言って別れた。
・・・俺は。
俺はあの時、なんであんな事を言おうとしたんだ?
別々の道を歩く事を決めたのは、俺なのに。
それに。
紡の前に烏野の主将が現れた時の、少し困惑しながらも、安心したような紡の顔・・・
ー ある人に、言われたんです。自分達と一緒に、全力で突っ走って行くのはダメかな?城戸さんの未来、少しだけ俺に預けてみない?・・・って ー
おそらく・・・紡に、あぁ言ったのはあの主将なんだろう。
澤「ほらまた。ちゃんと前を見て歩きなさいって昨日も言ったでしょ?」
『ちゃんと見てますって・・・背が小さいから視界が狭いんです・・・』
なっ・・・今のは・・・
それに昨日も、って・・・
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ー ほらほら、危ないからちゃんと前見なさいよ? ー
ー 見てますって・・・背が低いから視界が狭いんですー! ー
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じゃあやっぱり、あの時、俺とぶつかったのは・・・紡、お前だったのか・・・
昨日の出来事を思い出しながら、振り返り、自分の目に信じられない物が映る。
・・・!!
壁際で抱き寄せられ、主将の胸に顔を埋める・・・紡の姿。
頭から烏野のジャージを被せられてはいるが、あれは間違いなく・・・紡だ・・・
そう、か・・・
そういう事か・・・
紡・・・お前はもう、前に進み始めているんだな・・・
良かったな・・・と思うのに、何だこの胸の奥が抉られるような痛さは・・・
「はは・・・っ・・・痛てぇな・・・」
思わず、乾いた笑いが漏れだした。
矢「あ、いた!岩泉さん、松川さん戻りました」
「あぁ・・・わかった・・・」
もう1度、そっと振り返る。
紡・・・今度こそ、大事にして貰え・・・
俺が叶えてやれなかった幾つもの事、全部叶えて貰えよ?
矢「・・・岩泉さん?」
「あぁ、行こうか」
報告に来た矢巾にそう返し、行くぞ、と声をかけながら、俺は体育館の中へと戻った。