第22章 終わりと始まり
岩「そうだ。俺はズルイんだ・・・だから俺は今でも、お前が、」
「紡?」
俺が会話に割り込むように声をかけると、紡は弾けるように俺を見て、少し困惑した顔を見せた。
『・・・大地さん・・・』
近づく足を早め、紡の隣に並ぶ。
「あの、うちの1年が何かご迷惑を?」
言いながら紡を背後に隠す。
岩「あ、いや。どっちかっつーと、うちの1年がちょっと・・・」
『大地さん、違うんです・・・私が困っていたのを助けてくれたんです。だから・・・』
上着をキュッと掴み、それ以外は何もなかったと言いたげに訴えてくる。
さっきの話、聞いていたなんて言えないしな・・・
「そっか。じゃあお礼を言わないと、だな?」
安心させるように、頭にポンッと手を乗せた。
「うちの1年がお世話になったようで、ありがとうございました」
俺が言いながら軽く頭を下げると、それに続いて紡も同じようにした。
岩「いや、悪いのはこっちの1年達だから頭を上げてくれ」
そう言われ、もとの姿勢に戻るとぎこちなく手を差し出された。
岩「練習試合始める前に変な思いさせて悪かったな。アンタも、その、城戸も」
俺は差し出された手を握り、そんな事はないから大丈夫だと言って手を離した。
「それじゃ、後はコートで」
岩「あぁ、よろしくな」
「紡、行こうか?清水が心配してたよ?」
『・・・はい』
俺は、その小さな背中をそっと押しながら歩き出した。