第22章 終わりと始まり
清水は笑いながら、スガ達の所へ行ってしまった。
・・・俺、普段から顔怖いか?
まぁ、今はそんな事はどうでもいい。
俺はジャージを羽織り、その足で体育館の扉を抜けた。
「確かここの体育館の水道場は、すぐ近くだったよな」
独り言のように言いながら角を曲がろうと足を進めた。
・・・いた。
けど、1人じゃない?!
思わず曲がったばかりの角に下がり、身を隠した。
いま、紡といたのって、例の・・・だよな?
その前に、何で俺は隠れたんだ?
別に後ろめたいことなんかないのに。
普通に声かければいいだけだろ?
自分の奇行に苦笑して壁から背中を離し、声をかけようと目を乗り出す所で話し声が聞こえてくる。
岩「・・・ひとつ、聞いていいか?バレーやめたった言ってたのに、烏野でマネージャー仕事してんのは・・・なんでだ?」
『それは・・・』
これは・・・俺は聞いてしまっていい話なんだろうかと自分に問う。
一時的とはいえど、引き受けてくれる話を向けられた時、気持ちに区切りを付けたいってのは聞いたけど、実際、どうしてそういう気持ちになったのかはハッキリ聞いてはいなかった。
真意は知りたい、とは思う。
でも、本人の知らない所で聞くのは・・・ダメじゃないのか?
『ある人に、言われたんです。自分達と一緒に、全力で突っ走って行くのはダメかな?城戸さんの未来、少しだけ俺に預けてみない?・・・って。それを聞いた時、正直・・・心が震えました』
?!
それって、あの日の・・・?!
岩「それで、烏野バレー部のマネを?」
『私はまだ、マネージャーなんかじゃないです。これから先はまだわからないし、それに・・・また、バレーやりたくなったら・・・それはもう、ないかな・・・』
岩「やれよ、バレー。今すぐにじゃなくてもいいから・・・今だから言うけどよ、俺はお前がプレーしてる姿、好きだ・・・」
今のは・・・。
俺にはプレーする姿だけが好きだったとは、聞こえなかったんだけど・・・
これ以上は、聞かない方がいいだろうな・・・
そう思い、壁際から離れ通路に出て現状に驚いた。
まるで涙を拭い取るかのように目尻に指を当て、穏やかに微笑んでいる岩泉の姿・・・
なんて、優しい顔をしているんだ・・・
それがなぜ、俺の胸に・・・刺さるんだろう。