第22章 終わりと始まり
~岩泉side~
俺達は向き合ったまま、お互いに視線が外せなかった。
・・・時が、止まっているかと思った。
ほんの数分、いや、数秒なのかも知れないが・・・
そう思わせるほどに、その時間は・・・とても長く感じた。
「・・・紡、なのか・・・?」
目の前にいる紡が、本当に本人なのか自分で納得したくて、それが言葉に出てしまう。
俺がそう聞くと、紡は瞬きをしながら小さく頷いた。
「お前・・・何で、ここにいるんだ?」
本来ここにいるはずのない紡が、なぜ青城にいるんだ。
もし青城に入学したならしたで、及川はもちろん、国見や金田一からそういう情報は入ってくる。
『・・・何でって、言われても・・・その・・・』
紡は歯切れが悪く答え、俺は小さく息をついた。
普段はハッキリと物を言う紡が、話辛そうに語尾を弱める。
何か理由が・・・そう思いながら、何気なく足元に置かれたかごに目が行った。
[ 烏野高校 男子バレーボール部 ]
カゴには綺麗な文字で、そう書かれていた。
「あ・・・お前、まさか烏野、行ったのか?」
ウソだろ・・・という気持で、紡の肩に手を乗せた。
すると紡は、俺と視線を合わせないままで、ポツリポツリと来ていた推薦を断り、普通受験で
烏野を受けたと答えた。
「何でだ?!バレーボールで推薦来てるからって言ってたじゃねぇか!青城以外にも結構いい条件の所もあったはずだ!なのに何で烏野になんか?!バレーはどうした?!」
『バレーは!・・・バレーは・・・やめました・・・』
思わず声を荒げ、肩を揺する。
「・・・やめた・・・って、言ったか?今・・・」
俺の言葉に被せるように言うと、紡は顔を逸らした。
やめた・・・って、どういう事だよ・・・
あれだけ一生懸命に練習して、少しの事が出来るようになる度に喜んでいたお前が・・・バレーから離れた・・・?
「紡?・・・紡!こっち向けよ!」
『ずっとバレーばっかりで、疲れちゃった・・・』
顔を逸らし俯いた紡から出た言葉に、驚き以外なかった。
「疲れたって、なんだよ・・・?お前あんなに楽しそうにやってたじゃねぇか!なのに、疲れたからやめた?ふざけんなよ・・・」
突然のカミングアウトに、どんな顔をしていいのか、どんな言葉を言えばいいのかも分からず、苦しくなる。
何でだ?と、そればかりが繰り返す。