第22章 終わりと始まり
近くにいた矢巾に声をかけ、松川の所在を確認する。
矢「松川さんなら、さっき、始まる前に心穏やかにしてくるって言って歩いて行きましたけど・・・トイレですかね?」
・・・・・・・・・。
「わかった、練習続けろ。俺は松川を探してくる」
ぁんの野郎、何が心穏やかに・・・だ。
ちょっと目ぇ離した隙にサボりやがって。
俺はカバンからタオルを取り出し、顔洗いついでに松川を探しに体育館を出た。
出てすぐの水道場で顔を洗おうと思ってたが・・・
そこでは見かけないヤツがスクイズをせっせと洗っているのを見て、さすがに近くでバシャバシャやる訳には行かねぇなと他の水道場へ足を運ぶ。
通りすがりながら、チラリと見て随分と小柄なヤツだと思い、無意識に口元が緩む。
青城で見ない姿に、烏野のマネか?などと考えたりもするが・・・烏野メンバーとは違うジャージを着ているのを見て、きっと入ったばかりの1年マネなんだろうと納得する。
2つ目のトイレを覗き、松川の不在を確かめると、これ以上探しても時間のムダだなと判断し、通りがかった水道場で軽く顔を洗った。
松川のヤツ、戻ったら軽くシメとくか。
及川不在の今、ダラダラさせる訳には行かねぇからな。
ついでに戻りが遅い及川もシメるか。
そう心に決めて、体育館へ戻る通路を歩く。
ん?
さっき小さいヤツがいた水道場に、及川女子が固まって何かやってんな。
遠目に見ても派手にチャラチャラした女子ってだけで、それが及川の取り巻きだと分かる。
「ちょっと、まだ話終わってないんだけど!」
揉め事か?
ー あっ、岩泉さん! ー
1年部員が騒ぎの方から走ってくる。
「あいつら、何やってんだ?」
ー あの及川さんの追っかけ女子が、他校の女子に絡んでて・・・どうしましょう・・・ ー
「どうしましょうったって、他校の生徒が絡まれてんなら止めろよ。ったく、わかった。俺が行く」
ー はい・・・お願いします ー
及川の取り巻きもしょうがねぇな。
今度、及川から注意させとくっきゃねぇか?
事態を把握する為に、俺は早足で近づくと、詰め寄られている女子の威勢のいい声が聞こえてくる。
『これ以上、あなた達に付き合ってる時間はありません。悪いけど、それでも用事があるなら、別の時にして』
おっと?
体は小せぇのに、負けずに元気だな。