第7章 嵐の足音
~及川side~
クリスマスムードに彩られた街を、特にあてもなく歩く。
今日は有難いことに、体育館整備の為に練習は午前中だけで終わりだった。
せっかく午後はオフなんだから、たまにはプラプラしよーって岩ちゃん誘ったのに、寒い、うるさい、俺にかまうな・・・とかいって不機嫌に断わられちゃうし。
あ!
そうか!
ふふ~ん・・・岩ちゃんはきっと、紡ちゃんとデートの約束でもしてるんだ。
だからオレに、あんな風に不機嫌にしといて近寄らせなかったんだ。
ちぇー。
リア充め、爆発しちゃえ!
あ、でも爆発するのは岩ちゃんだけで。
紡ちゃん巻き込んだらかわいそうだしねー。
そんな事を考えながら路地から出だ瞬間、小さな衝撃に怯んだ。
「おっ・・・と」
一瞬驚いたけど、すぐに« す、すみません!»
って聞こえた声に足元を見ると、そこにはオレとぶつかったせいで地面にペタンと座りこんでいる女の子。
「こちらこそ・・・」
といいながら、立ち上がらせて上げるためにスッと手を差し伸べる。
『・・・お、いかわ先輩?』
女の子が顔を上げると、フワフワに髪を巻き上げた紡ちゃんだった。
とりあえず立ち上がらせて、落としてる荷物を拾い渡すと中身が揃っているか確認している紡ちゃんの手に、
あれ?
「参・・・考書?」
オレの呟きが聞こえたのか、紡ちゃんは «これでも一応、受験生なので »・・・と答える。
いや、あれ?
確か紡ちゃん、岩ちゃんから聞いた夏休みくらいの話だと、ウチの学校も含めて既にいろんな所から推薦の話が来てるって言ってなかった?
問いかけようと紡ちゃんを見ると、さっきの衝突でなのか、ひざを擦りむいて血がにじんでいた。
« 舐めときゃ治る»
なんてワイルドな事を言う紡を無理やり座らせ手当する。
途中、絆創膏を取り出したりしてると« 女子力高いですね»なんて言われたりしながらも、
手当を続ける。
手当が終わり、紡ちゃんが立ち上がるのを見て捻挫とかはなさそうだ・・・と無意識に確認すると安心する。
それで、紡ちゃんごあんまりにも可愛い格好してたから思わず聞いてしまった。
「これから岩ちゃんとデート?」
その言葉に紡ちゃんが顔を暗くする。
もしかして聞いちゃいけなかったかな?
変なこと聞いちゃってゴメンね?って言おうとした・・・ケド・・・