第22章 終わりと始まり
『なに・・・してるの・・・』
ポタポタと髪から落ちる雫を払いながら、まっすぐ見据える。
「あんたが・・・あんたが悪いんだから!!」
私の周りに広がる香りから、かけられたのは月島君の物だとわかった。
ただでさえ、持ち合わせが多い物じゃないのに。
自分の状態を確認する前にそんな事を思って、
無言の圧力をかけながら、手を伸ばす。
『返して』
「・・・嫌だって、言ったら?」
『それはあなたが持つべきものじゃない。だから、返して』
もう1度言って手を伸ばしても、それを返してくれる事はなかった。
付き合いきれない。
とりあえず出来上がってるものをカゴに入れて、彼女達が諦めていなくなったら、月島君のを作り直そう。
幸い、追加分位ならまだ残ってる。
足りなくなったら、私のミルクティーを差し出そう。
大きくため息を吐き、作業を続けるために彼女達に無言で背中を向けた。
「ちょっと、まだ話終わってないんだけど!」
後ろから言われても、私は振り向きもせず自分の作業に手を付ける。
「聞いてるの?!」
腕を掴まれ、振り向かされそうになる。
その手を軽く払い、私はひとつ息を吐きながらゆっくり彼女達を見た。
『これ以上、あなた達に付き合ってる時間はありません。悪いけど、それでも用事があるなら、別の時にして』
「バカにしてるのっ?!」
スクイズを振り上げるモーションが見え、これからまた、中身をかけられるのかと思わず顔を逸らした。
・・・あれ・・・?
さっきのようにバシャりと来ない事に、そっと彼女達を覗き見た。
振り上げられた腕は別の誰かに掴まれ、私はその誰かの後ろに匿われていた。
スクイズの行方はと視線を動かせば、その腕を掴んでいる人が取り上げていた。
ー その辺にしといたらどうだ。どう見たってお前達の方が加害者だぞ ー
「・・・ヤバいよ、ちょっと・・・」
「っ・・・覚えときなさいよ!・・・行こっ!」
バタバタと足音がして、彼女達がその場を立ち去った事が分かる。
ー ・・・ったく、どうしようもねぇな。おい、アンタ、大丈夫か? ー
『あ、はい・・・何とか』
ー 何とかって・・・びしょ濡れじゃねぇか!ほら、これ使っていいから拭いとけ ー
そう言いながら、肩にかけていたタオルを私の首元にそっと押し当てた。