第22章 終わりと始まり
去年のクリスマス・・・?
「とぼけてもムダだからね。私達3人でちゃんと見たんだから!駅前通りを及川さんと手を繋いで歩いてた所!」
・・・あぁ、あの時の事か。
「そ、それに!往来で堂々と抱き合ったりして!」
あれは及川先輩が急に・・・
ギャアギャアと喚かれる事がバカバカしくて、反論する気さえ起きない。
「何とか言ったら?・・・それとも、・・・あぁ、言えないよね?二股かけてました、なんてさ」
「えー、何それー?」
「この人さぁ、中学の時に岩泉さんと付き合ってたんだよ。なのに及川さんとクリスマスデートなんて、二股でしょ?」
『違う!そんなんじゃない!!』
だって・・・だって、あの時にはもう・・・
「それにさぁ、中学の時は地味子だったのに、何その急なイメチェン?派手に変わっちゃって、何なの?高校デビューでも気取ってんの?」
「またダンマリ?結局、見た目だけ派手に変えたって、中身は地味子のまんまじゃん?」
「ってゆーかぁ、外見変えないで中身変えたらぁ?」
ここは青城の体育館。
今日は武田先生が一生懸命にお願いして、条件付きではあるけど練習試合を取り次いでくれた。
だから。
出来るだけ烏野メンバーが練習試合に集中して過ごせるように騒ぎは起こしたくない。
でも・・・
だからこそ。
こんな私個人に向けられた無駄な時間を早く終わらせたかった。
私は手に持っていたスクイズを、水道場の淵に
コトリと置いた。
『あなた達が言いたい事は、それだけ?』
「なっ!!」
出来るだけ静かに、事を荒立てる事のないように、言った。
「とにかく、チャラチャラ外見変えて及川さんに近寄らないで!」
『・・・悪いけど。私が及川先輩に近づいてるわけじゃないから。それに、外見変えてまでって言うけど、それはあなた達も同じなんじゃないの?』
「ほんっと中身は最低。及川さん絶対騙されてるんだ。外見磨くなら、中身も磨いた方がいいんじゃない?」
バカにした目で私を見ながら、そんな事を言ってくる。
『その言葉、そのままお返しするよ』
「っ・・・!!」
ー バシャッ ー
言うだけ言って、瞬きをした瞬間の出来事だった。
3人の中央にいる人物が水道場の淵にあったスクイズを掴み、私にそれをかけた。
じわじわとジャージに染みが広がっていく。