第22章 終わりと始まり
月島君の方を見ながら、声をかけられた時の事を思い返していた。
あの時は確か・・・
金田一君に岩泉先輩の事とかを聞かれてて。
なんて答えていいのか分からなくて・・・
・・・あっ!!
そっか・・・そう言う事なのか。
だから月島君、あの時あんな風に声をかけてくれたんだ。
澤村先輩の名前を出せば私は言う事を聞くだろうって思いつくし。
それにそうすれば金田一君だって、さすがに相手校の3年生の名前が出たら、それ以上は追求出来ないしね。
月島君て、策士だ。
だけど、その後。
どうしてあんなに金田一君事や、その、岩泉先輩の事を聞いてきたんだろう。
金田一君は青城バレー部のジャージ来てたから、これから対戦する相手って分かるし、気になるのは分かるけど・・・
でも。
岩泉先輩は名前だけしか出てないし、その場にいなかったんだからバレー部と関係があるかどうかなんて分からないはずなのに。
それとも、話の流れで出てきた名前の人物を聞いてきたとか?
うまく考えがまとまらない。
だけど月島君が助け舟を出してくれたことは確かだと思うから。
私は足を早めて月島君の隣に並ぶと、ひょいっと顔を覗いた。
月「ちょっと、邪魔なんだけど」
さっきと変わらず不機嫌な顔を見せる月島君に、私はニコリと笑顔を向けた。
『月島君、ありがとうね?』
月「何、急に。お礼なんか言われる理由、ないんだけど」
素っ気なく返す月島君に、私はもう1度笑顔を向けた。
月「何なのニマニマして・・・気持ち悪いんだけど」
ため息を吐きながら言う月島君の背中をポンッとひとつ叩いた。
『女の子に、気持ち悪いとか失礼ねぇ』
そう言うと月島君は不機嫌な顔を解除して私を見下ろした。
月「女の子?そんなのドコにいるのさ。少なくとも僕の目の前には、【 ポチ 】しかいないんだけど?」
目の端でうっすらと笑い、月島君がそんな事を言った。
私は軽く肘で月島君を押してやる。
月「ちょっと、ホント何なの?」
そう言いながらも、さっきより少しだけ穏やかに笑う月島君に、別にぃ?と言いながら私はまた笑顔を返した。