第22章 終わりと始まり
やばい・・・涙、出そう・・・
「ポチ」
そう呼ぶ声と同時に、後ろから肩を掴まれ振り向かされる。
『あ・・・月島君・・・』
金「ポチ?って、城戸の事か?」
『あ、はは、・・・まぁ・・・』
月「・・・ナニ?」
月島君は私と目が合った時、なぜか眉をひそめ、眉間に深いシワを刻んだ顔で金田一君に視線を送っていた。
金「あ、いや、別に」
月島君にそう返す金田一君の顔は、まるで見てはいけない物を見たかのような、そんな顔だった。
月「澤村さんが、早く来いって呼んでるから」
『大地さんが?分かった、行こう月島君。・・・金太郎、じゃあまたね・・・』
私が慌ただしくそう言うと、金田一君は、あぁ、またなと手を上げた。
月「行くよ」
『あ、ちょっと引っ張らないでよ月島君』
月島君は私のリュックをしっかりと掴んだまま、早足で歩き出した。
『あのさ、歩きにくいんですけど?』
チラリと月島君を見上げながら、その歩く速さに遅れないように足を運ぶ。
月「だから?」
『離して貰えると嬉しいかな?って』
月「ムリ。離すとポチ、脱走するから」
『しないから!犬のお散歩じゃないんだから』
バタバタと手を動かし、少しでもリュックを掴む手が緩んでくれないかと願うも、それは叶わない。
月「この身長差で、僕に勝てると思ってんの?」
不機嫌ながらも、月島君がニヤリと笑いを見せる。
『あー!すぐそうやってちっちゃい呼ばわりするんだから。ねぇ、山口君も助けてよぅ』
山「オレ?えっと・・・ムリかも・・・」
月島君の隣を歩く山口君に助けを求めても、不機嫌な月島君の顔を覗き、断られてしまう。
この状態、私ホントに脱走した犬みたいじゃない。
月「さっきの不愉快なヤツ、誰?」
『不愉快?さっきのって、金太郎の事?』
機嫌の悪さは変わらないまま、月島君が金田一君の事を聞いてくる。
どういう意図が分からないけど、とりあえず私は金田一君の事を話した。
『金太郎は私と同じ中学で、影山と同じバレー部だったの。部活の時は隣同士のコートで、スクイズ空になると、あげたり貰ったりしてたんだ~。月島君みたいにあ~んなに大きいのに、優しいんだよ?』
そう話すと月島君がピタリと足を止め、私を見る。
急に足を止めた月島君を、私も仰ぎ見た。