第22章 終わりと始まり
田中先輩にシューズを手渡し、生意気ながらも注意をしていると、離れた所から名前を呼ばれた。
ー 城戸?!城戸って、あの城戸か?! ー
えっ、私?
誰?!
呼ばれた方を振り返り、離れた場所にいるふたつの人影をジッと見てみる。
片方の人は分からないけど、でも、あのシルエットには大いに見覚えがあった。
『・・・金太郎?!』
思わず叫ぶと、その見覚えのあるシルエットは私に向けて軽く手を振り、私はそれを見て駆け寄った。
『わぁっ!ホントに金太郎だ!久し振りだねぇ、卒業式以来だよね?』
金「だぁっー!!金太郎って呼ぶなって言ってんだろ!オレは金田一だ!!」
『えぇ?イイじゃん別に金太郎で。可愛いじゃん?』
金「かわいくねーよ!!」
中学の時からのやり取りを、懐かしみながら繰り返す。
『・・・じゃあいいよ。もう呼ばないから。・・・金太郎って呼ぶの、私だけだったし嫌ならもう呼ばない』
そう言ってションボリして見せると、金田一君はウッと詰まらせ、横を向きながらもポツリと返した。
金「・・・・・・お前だけなら・・・許す」
『ホント?!じゃあ、私の事も紡って呼び捨てでいいよ?』
金「えっ?!あ、えと、・・・イキナリ呼べっか!!」
私が金太郎って呼ぶのを許してくれる代わりに、私の事も呼び捨てでって言ったんだけど、金田一君は途中まで言いかけて、やめた。
金「っていうか、何で城戸が烏野にいるんだ?お前、青城来るんじゃなかったのか?推薦来てたんだろ?」
ー えっ?!そうなの?! ー
金田一君の言葉に、隣にいた人が驚きの声をあげた。
「え?あ、え~っと・・・?」
矢「あ、どうも初めまして。バレー部2年の矢巾です」
金太郎君の隣にいた人は、なぜか妙な笑顔を向けながら挨拶をして、握手をねだるように手を差し出した。
『申し遅れまして・・・烏野高校1年の城戸です。今日はお招き頂きましてありがとうございます』
私も挨拶をしながら、差し出された手を軽く握った。
矢「城戸さん、下の名前は?」
『・・・?紡・・・ですけど・・・』
初対面の相手に下の名前を聞かれ、なんだろうと思いながらもそれに答えた。
すると矢巾さんと名乗る人は、その手を引き寄せ両手で包んだ。
矢「紡さん、かぁ。見かけにピッタリの可愛いらしい名前ですね」
『・・・はぁ』