第22章 終わりと始まり
そう言いながら、城戸が周りをそっと見渡した。
『ごめんね影山、変なこと言って。だから、練習試合出ない人にお願いしてくる』
は?
・・・はぁっ?!
予想外の城戸の答えに声にならない言葉で口が開く。
練習試合出ない人にって、誰に?!
『えっと・・・影山がフルで出るんだから、菅原先輩は出ないんだよね?・・・じゃあ、菅わ、ムグっ・・・』
城戸が立ち上がりかけたのを見て、俺は口を押さえて無理やり座らせた。
「わかったから。いいから早く寝とけ」
『いいの?・・・ありがとう影山』
そう言って城戸は髪留めをパチンと外し、2分とかからず寝息を立て始めた。
本格的に寝てしまったのか、手に握っていた髪留めがコトンと落ち、転がっていく。
その音に清水先輩が気づき拾い上げると、城戸を見てフッと笑顔を見せ立ち上がった。
清「澤村、ちょっとそこの鞄から大きいタオル、出してくれる?」
澤「タオル?」
清「そう。城戸さん、寝落ちしちゃったから」
澤村さんが取り出したタオルを受け取り、清水先輩が城戸にそっとかけた。
清「城戸さん可愛い。余程、和泉先生にしつこくされて疲れたのね・・・影山、狼の群れからこの子の寝顔を守りなさい?」
「どういう・・・」
清「簡単。この手をこうして、こっちの手をこう。ね?頼んだわよ?」
ね?じゃないっすよ!
これ、誰がどう見たってヤバイだろ!!
思わず城戸に回された腕を引き抜こうと動かす。
『ん・・・』
ヤベェ!
腕を動かしたタイミングと、マイクロが揺れた振動が重なり、城戸がスルッと傾いてきた。
この状況・・・さっきより密着度が増してんじゃねぇか?!?!
な、何なんだよ、この生殺しな状態は!!
ギギギ・・・と音がしそうなぎこちない動きで首を動かし城戸を見る。
人の気も知らないで、スヤスヤ寝てやがる。
・・・まつ毛、長いな。
そういえばコイツ、朝から妙に浮き沈み激しかったような気がする。
何か変だと聞いても、別に普通、あ、みんなの練習試合があるから気合いが入ってるのかもとか言ってはぐらかすし。
みんなの、練習試合・・・?
そっか、そういう事か。
俺達はこれから、青城に行くんだ。
でも、城戸からしたら・・・〖 岩泉さんがいる青城 〗に行くんだよな。
俺達は俺達の、戦いに行く。
だけど・・・