第22章 終わりと始まり
それを見て、城戸は申し訳なさそうに、でも、嬉しそうにありがとうございますと告げる。
澤「紡、待ってるから着替えておいで?」
『大地さん、着替えは後で大丈夫です!それより先生、早く逃げ・・・じゃなかった、出発しましょう!なるべく早く!』
武「えぇ、もちろんそのつもりですが、それにしても城戸さん?どうしてそんなに慌てているのです?」
『あ~、その・・・和泉先生の話が長くて面倒になってきちゃって。無理やり話を終わらせて、振り切って来ちゃいました・・・』
「は?!」
澤「えっ?!」
その場にいた俺と澤村さんが、城戸の驚きの行動に声を上げた。
武「そうでしたか。それでは和泉先生に呼ばれてしまう前に出発しましょう」
こ、この人は・・・
『武田先生、ごめんなさい。でも私、どうしてもあの長話と自慢話に我慢出来なくて』
武「大丈夫ですよ、城戸さん?明日になって和泉先生に怒られることがあれば、僕も必ず同席して、一緒に謝ってあげますから。どんなに追い払われても、必ず。さ、急ぎましょう」
澤「紡、その時は俺も一緒に謝るから心配するなって。さ、乗って?」
澤村さんに促され、オレ達はマイクロに乗り込んだ。
『先生、青城まではどれ位で着きそうですか?』
武「そうですねぇ、順調に走れたら・・・20分もあれば、ですね」
『ありがとうございます。あ、急いではいますけど、先生?安全運転ですよ?』
城戸がそう言って、武田先生が分かってますよとニコリと笑う。
『20分か・・・あ、影山、隣座ってもいい?』
「あ?別に。あと、コレやるから飲め。あんだけダッシュしたから、カラカラだろ」
さっき買ったものを手渡してやると、城戸はありがとうと言って飲み始めた。
武「皆さん座ってますね?それでは出発します」
先生の声の後、マイクロが動き出した。
『影山、お願いがあるんだけどいい?』
「なに」
『あの、さ?青城に着くまで・・・ちょっと寄りかかってもいい?なんか眠くて』
・・・は?
「お、お前、何言ってんだよ?」
『呼び出された時の話で精神的に疲れちゃって。あと、その後のダッシュで。ダメ?』
「ダメだって、言ったら?」
心配させたお返しに、城戸に少し意地悪をしてみたくなって、思いつきでそう言ってみる。
『ん~・・・そうだよね、これから練習試合出るのにダメだよね』