第7章 嵐の足音
そんな私の様子に、及川先輩は手を伸ばしたまま、
「だよね・・・ゴメンね。何か辛い事たくさん聞いちゃったね・・・」
そう言って、私の手を何度も撫でた。
そんな時、私のスマホが鳴り、反射的に包まれている手を引き抜く。
着信の相手を確認すると、それは待ち合わせの1人でもある、慧太にぃであった。
出てもいいよと言われ、すみません・・・と言いながら電話に出た。
慧「おぅ、紡いまどこにいる?桜太から電話来て、これから病院出るからって言ってるから、先に落ち合おうぜ」
『あ、うん。わかった。じゃあ後でね』
今いる場所を教えると意外にも途中まで来ている事が分かり、あとは簡単に話を終えて電話を切る。
「大丈夫だった?」
『あ、はい。下の兄が近くまで来てるから落ち会おうって』
そう言って返すと、及川先輩は、じゃ、ケーキ食べちゃおっか、といって残りを食べ終え会計を済ませて外へ出る。
割り勘でいいと言ったのに、男を見させてよと笑った及川先輩がスマートに会計を終えてしまった。
店内にいた時は気が付かなかったけど、外へ出ると、いつの間にか雪が降り出していた。
「ホワイトクリスマスだね~」
コートを着直しながら、及川先輩が言う。
私は次々に舞い降りてくる雪を見上げながら、時折スッーと首元をくすぐる冷たい風に目をつぶる。
そんな時、フワリと首元が暖かくなり、びっくりして目を開けると、そこには先程まで及川先輩が手にしていたマフラーが巻かれていた。
『及川先輩、これ・・・』
「女の子が体を冷やしちゃダメなんだよ?それに紡ちゃんは、これから大事な時期を戦わなきゃなんだし風邪とかこまるでしょ?ね?」
さっきと変わらず穏やかな笑みを浮かべ、及川先輩は私の頭をポンポンする。
どうしてみんな、私を見ると頭をポンポンするんだろうと思いつつ及川先輩を見上げる。
必ずお返ししますから、というやり取りをしていると、背後から慧太にぃの声が聞こえた。
慧「紡?」
振り返ると、傘を畳みながら私達をジッと見ながら慧太にぃがこちらを見ていた。
慧「ゴメン、待たせたか。えっと?」
言いながら、慧太にぃは私の隣に立つ及川先輩をチラチラ見る。
『あ、慧太にぃ、この人は及川先輩って言って、同じ中学の先輩だよ。今日偶然会って、お互い時間があったから、お茶をご馳走になってた』