第7章 嵐の足音
あれだけ普段から仲良く?している相手に、私達が終わりを迎えていた事を・・・何も話していないと言うのに私がそれを話してもいいのだろうか・・・と・・・
重い空気が流れていくのを、私はケーキの上でにこやかにしているサンタクロースをつつきながらやり過ごしていた。
「紡ちゃん?大丈夫?もし、ホントは岩ちゃんとケンカでもして、仲直りしたいとか思っているんなら、オレが間に入ってあげようか?」
未だ心配してくれている及川先輩に、私は迷った挙句、話すことにした。
『・・・ったんです。私達・・・』
「ん?なに?」
『もう、終わったんです。岩泉先輩とは別れました・・・』
暫くの沈黙のあと、及川先輩は凄く驚いて、何を言ったらいいのか分からないような面持ちでいた。
「えっと・・・その・・・。どういう事?・・・」
ゆっくりと言葉を選びながら、及川先輩は私に問いかける。
別れたことを既に伝えてしまったのだから、なぜ?と問われれば説明するのも筋かな?と思った私は、ことの経緯を掻い摘んで話した。
途中、相槌を打ったり、ひと言ふた事を交わしながら、話が進むにつれて、及川先輩は、その穏やかな顔から少し難しい表情に変えていった。
「・・・あんだけ、手放すなって、言ったのに・・・」
ポツリと及川先輩が何かを呟いた。
何を言ったのかは、私には聞き取れなかったので、聞き返す。
『?・・・及川先輩?』
私が声をかけると、ハッとした顔を見せながらも
「なんでもないよ・・・」
と、息を吐いた。
『及川先輩・・・。あの、そういう事なので、私と岩泉先輩はもう、なんでもないので・・・私の事も構ってくれなくても、いいです・・・』
精一杯の強がりを吐く。
テーブルに置いている手が震えてしまうのを隠す様に押さえた。
もう、大丈夫だと思っていたんだけどな・・・
視線を落とし、まだ震えている自分の手を見つめる。
すると、そんな私の手に被せるように及川先輩の手が伸びてきて、優しく包む。
どうしたのだろうかと顔を上げると、とても穏やかな顔をした及川先輩と視線が合う。
何だか気恥ずかしくなり再び視線を逸らす。
「紡ちゃん・・・」
名前を呼ばれ顔を上げると、切なさに瞳を揺らしながら及川先輩が言った。
「オレに・・・しない?」
その言葉に、私はゆっくりと横にかぶりを振った。