第22章 終わりと始まり
ん?
何で名前呼びされただけでドキドキして眠れなくなる?
中学の時だって、クラスの女子とかに名前呼びされた事あるけど、ドキドキするとか、そんなのなかった。
なのに何で城戸さんの事を考えてると、そう感じるんだろう。
『山口君、おーい?』
「わぁっ?!」
ボーッと考えているところに、城戸さんが覗き込んできて驚いた。
『もぅ、人の顔見て驚くとか。私そんなに驚くような顔?』
ちょっと口を尖らせて城戸さんが拗ねた。
そんな事すら、可愛いと思えてしまう。
「あ、いや、違う違う。ちょっとボーッとしてたから、それで・・・城戸さんは電話はもう終わったんだ?」
『あ、うん。話の途中だったのにごめんね?』
そう言って城戸さんはお弁当の続きを食べながら、何かを考え込み始めた。
何を、考えてるんだろう?
もしかして、澤村さんの事じゃ・・・ない、よね?
自分のお弁当を食べながら、そうっと城戸さんの顔を見る。
難しい顔、してる。
こんな時、何か話しかけた方がいいのかな?
それとも、こんな時だからこそ、話しかけたらダメなのかな?
どうすればいいのか分からなくて、ツッキーの顔を見た。
月「山口、なに?」
「え?あ~、何でもないよ、あはは・・・」
ダメだ、聞けない。
曖昧に返すと、ツッキーは城戸さんをチラッと見てため息をついた。
月「ポチ、食べないと背が伸びないよ」
『・・・!食べます!背が伸びるならいくらでも!』
月「さっきから難しい顔して、そんなに味わい深いお弁当なの?」
ツッキーはそう言って、城戸さんの手首を掴み箸でつままれた卵焼きを口に入れた。
『あ、ちょっと!何勝手に?!』
月「へぇ、城戸家のは、甘いんだね」
城戸さんに怒られてもビクともせず、そんな味の感想なんか言ってるけど・・・
いま!その箸って城戸さん使ってるやつじゃん?!?!?!
『そうそう、我が家のは甘い卵焼き。だから、月島君の好きな味かもね~』
城戸さんはそう言いながら、またお弁当を食べ始める。
月「じゃあさ、コレあげるよ。スグに背が伸びるかもよ?僕はこれ食べてスクスク伸びたからね」
ツッキーは自分のお弁当から卵焼きを箸で持ち上げ、城戸さんの方に手を伸ばした。
ちょっと待ってツッキー?!
そ、それってさ!!
月「ほら早く、落ちるデショ?」