第22章 終わりと始まり
~山口side~
ツッキーが城戸さんを、ちょっと強引に誘ってオレ達は3人でお弁当を食べていた。
クラスのヤツらが何かいろいろ話してるけど、そんなの別に気にならない。
チラッと城戸さんを見ればオレの椅子にちょこんと座ってて、椅子が高いとか言いながら足を宙に浮かせてるのとか、可愛いと思う。
『その答えは、今は教えてあげない。山口君が自分で気がついた時、その時に初めて武器になる、と思う』
サーブについて城戸さんが話している時、誰かのスマホの振動が聞こえた。
オレ?じゃないから、ツッキー?
でも、ツッキーはそもそも学校にいる時は電源落としてるから違うか。
ってことは?
城戸さんに視線を向けると、ポケットからスマホを出して着信相手を確認していた。
『大地さん?』
「え?!」
『ちょっとごめんね?大地さんからだから出てみる』
そう言って城戸さんは電話に出て話し始めたけど。
・・・大地さん、って、澤村さんの事だよね?
朝練の時も思ったけど、何で大地さん?
しかも澤村さんは澤村さんで、紡!とか呼んでたよね?
何で急に名前呼び?
そう言えば菅原さんは、結構初めから紡ちゃんとか呼んでたけど・・・
紡・・・とか呼び捨てなのって、凄い親身な感じがする。
あれ?
いや、ま、まさかね???
一瞬浮かんだ事を認めたくなくて、フルフルと頭を振った。
『あ、今日は月島君と山口君に声掛けて貰ったので一緒に食べてます』
澤« そうなの?じゃあ今度、俺も声掛けるから一緒にお弁当食べよう? »
電話口からそんな会話さえ聞こえてくる。
大地さん、はい、アーン。
じゃあ今度は俺が、紡、アーン。
・・・・・・・・・・・・。
おかしな想像で、顔が熱くなる。
「痛っ」
突然、弁慶の泣き所に痛みが入る。
思わず声に出して顔を上げると、それをやったのがツッキーだと分かった。
月「山口、考えてる事がダダ漏れ。馬鹿デショ」
城戸さんがまだ会話中の為、ツッキーが小声で言った。
ダダ漏れって、言われても。
いいなぁ、オレも紡・・・はハードルが高いから、せめて菅原さんみたいに紡ちゃん、とか呼んでみたい。
そんでさ、オレも、その、た、忠君・・・とか?
や、やばいなぁ。
城戸さんに、そんな風に呼ばれたらドキドキして眠れなくなっちゃうかも。