第7章 嵐の足音
「いいのいいの!今日はクリスマスだよ?可愛い可愛い女の子に男がプレゼントするのは当たり前なんだから」
『いえ、でも・・・』
「男に恥をかかせないの、だから受け取ってちょうだいよ」
そう言って、じゃ、お茶でもしに行こうか?と私の手を引き歩き出した及川先輩の前に周り、視線を合わせながらキュッとコートを掴んだ。
『あの、ありがとう、ございます・・・』
「どういたしまして。っていうか・・・紡ちゃん、可愛すぎ~!コート掴みながら上目遣いって、もう破壊力ありすぎるからぁぁぁ!」
そのままギューッと抱きしめられ、街中で、やめてください!って抵抗しても暫くは離して貰えなかった・・・
その後は、恥ずかしいやら何やらで真っ赤な顔をした私の手を引いて、及川先輩はお茶しよ~っと言いながら店内に入って行った。
それぞれ温かい飲み物と、及川先輩がせっかくのクリスマスだからってサンタクロースが乗ったケーキを注文してくれた。
店内が空いていたこともあって、注文した物がすぐに運ばれてくると、とりあえず暖まろうと言われそれに口を付けた。
熱いミルクティをふぅふぅとしながら口にしていると、何か言いたげな顔をして頬づえをつきながら及川先輩がこちらを見ていた。
『どうかしましたか?』
私が問いかけると、ん~・・・といいながら、チラリと視線を彷徨わせながら及川先輩が、口を開いた。
「岩ちゃんと・・・ケンカでもした?」
思ってもいなかった言葉に、私は動揺してカップを落としそうになる。
『いえ・・・別に。ケンカとかは・・・』
私は思った。
及川先輩は私達の事を何も知らないんだ・・・
だから、デートの予定は?などと疑問にも思わずに聞いてきたんだ。
「ホントに?会ってからずっと思っていたんだけどさ、紡ちゃん、オレが岩ちゃんの名前出すと、何だか居心地悪そうだったし、ケンカでもして今日は1人でフラフラ過ごしていたのかな?って、思ったんだけどね」
もちろんケンカなんてしていない。
そもそも、ケンカが出来るほど、もぅ・・・近くにはいないから・・・
カップに手をつけたまま俯いている私を心配そうに覗く。
「じゃあ、何か悩んでる事でもある?オレで良ければ、相談に乗るよ?」
私はどうすべきか、迷っていた・・・話すべきか、話さないべきか・・・