第22章 終わりと始まり
山「城戸さん、左利きだったの?確か練習の時は右で・・・だったよね?」
『あぁ、うん、まぁ。元々は左・・・かな?ごめんね、気になるようなら右で食べるよ』
そう言って持ち帰ると、山口君はそうじゃなくて!と返して来た。
山「普段は左利きでいるなら、どうして練習の時は違うのかな?って思っただけ。スポーツやるなら左利きは有利だとか、よく聞くからさ?」
『中学の時からあんまり左は使わなかったから、そのせいかも?なんか左利きってだけでいろいろと注目されるのが嫌だったから』
山「じゃ今は平気なの?」
『平気っていうか、バレーやるのやめたから、かな?』
私の言葉に、2人の箸が止まった。
山「やめた?だってオレ達の練習の時は、あんなに楽しそうなのに?」
月「・・・・・・」
しまった・・・と、私も箸を止める。
何でいま、私はスルッとそんな事を話してしまったんだろう。
わざわざ言わなきゃ、分からないことなのに。
『・・・ま、いいじゃない?それより、今日は練習試合あるから2人とも頑張ってね?』
無理やり話を変えて、この場を収めたかった。
山「2人ともって、試合に出るのはツッキーだから、オレは頑張りようがない・・・かな」
シュンとする山口君に、月島君はため息をついてから、また食べ始める。
『確かに今日は出ないかもだけど、でも、私がこの前話した事、忘れちゃダメだよ?今は出れないかも知れないけど、私とは違う山口君は可能性はあるって言ったでしょ?』
そう言うと山口君はハッと表情を変え、私を見つめる。
『・・・ね?』
山「・・・うん。そうだったよね」
『それに、コートの外にいても吸収出来る事はたくさんあるから。山口君はMBだよね?そしたら今日の月島君や相手のMB軍団をよーく穴があくほど見ちゃいな?あと、サーブとかね?』
山「サーブ?」
山口君に聞き返されて、ニコリと頷く。
『その答えは、今は教えてあげない。山口君が自分で気がついた時、その時に初めて武器になる、と思う』
そう話していると、ポケットの中でスマホが震え出す。
こんな時間に電話?
ゴソゴソと取り出し、着信の相手を確認する。
『大地さん?』
山「え?!」
ちょっとごめんね?と断り、そのまま着信を取った。
澤« あ、出た出た。あ、えっと俺だけど、昼休みにごめんね?いま大丈夫? »