第22章 終わりと始まり
山「はい、どうぞ?」
月島君はとっくに自分の椅子に座っているのに、山口君は私に勧めた椅子を引いて待っている。
『ありがとう、山口君』
ー おぉっ、あの山口が・・・ ー
ー ジェントルマンだな、アイツ ー
・・・・・・・・・・・・・・・。
このクラスの山口君の評価って・・・
とりあえず私は椅子に座り、座り・・・椅子が高い!
チラッと椅子の高さを調節する場所を見ると、月島君のも山口君のも、私とは真逆の位置に設定されていた。
・・・そうだよね、よくよく考えてみれば2人とも高身長だから当たり前だよね。
そんな椅子に私が座れば・・・やっぱり・・・足が宙に浮く。
月「プッ・・・どんだけ小さいんだよ・・・」
ボソッと呟く月島君の言葉に、山口君も横を向いて口元を押さえている。
『う、うるさいなぁ。つま先伸ばせば届くから!ほら見て』
意気揚々と言ってつま先を伸ばしても、辛うじて届くか?位の距離に2人とも肩を揺らした。
ー おい見ろよ、あの月島が笑ってる ー
ー 月島くん、あんな柔らかい顔するんだ?初めて見た ー
私達を遠目に見ながら、ギャラリーがザワザワとする。
他のクラスというものは、こんなにも居心地の良くないものなんだろうか・・・
それとも、私が気にしすぎているのかな?
お弁当を食べ始めている2人が、なかなか包みを開けようとしない私を不思議そうに見た。
月「ポチ、食べないの?」
『食べる・・・けど』
山「けど?」
『あ、あのさ?なんか凄くアウェーな気がするんだけど、さ?』
チラリと周りに視線を流し、ヒソヒソと話す。
山「そう?オレは全然そんな感じしないよ?」
・・・ダメだ・・・
山口君、いろいろと行動力はあるんだけど、ちょっと天然っぽい・・・
はぁ・・・と小さくため息を吐きながら、半ば諦めるようにお弁当を広げる。
中には小さなメモが入っていて、開くと見慣れた桜太にぃの文字が並んでいた。
« 今日は練習試合の日だね(*´ω`*) ちゃんとご飯食べて、お役目しっかりね! »
しっかりね!って、言われても・・・
軽く脱力しながら蓋を開け、そこに詰め込まれた愛情に口元が緩んだ。
月「お弁当見て嬉しそうとか、お子様・・・」
そう突っ込んでくる月島君をよそに食べ始めると、それを見て山口君が、あれ?と声を出した。