第22章 終わりと始まり
昼休みを告げるチャイムが鳴り、午前中の授業も終わる。
う~ん、と伸びをして席を立とうとすると、この時間を担当した武田先生と目が合ってしまい小さく笑う。
武「城戸さん、そんなに伸びをして、僕の授業もしかして退屈でしたか?」
出席簿や授業で使った資料をトントンっとまとめながら、武田先生が小声で聞いてくる。
『そんな事ないですよ?武田先生の授業は初めてでしたけど、私は楽しかったです』
私がそう答えると、武田先生はそれならよかった、と笑顔になる。
『でも驚きました。授業が始まる時、急に武田先生がこのクラスに入って来たので、一瞬クラス間違えてるのかと思っちゃいました』
武「さすがにそれはないですよ。赴任当初はよくありましたけど」
『あったんですか・・・』
そう言葉を交わして、お互い笑う。
本来なら、武田先生は3年生を受け持っている。
だから、普段特別な用事がない限りは1年の教室には来ることがないんだけど。
武「このクラス担当の先生が体調不良で帰られたので、1年の先生が自習監督で・・・との事だっんですが、ちょうど僕も手が空いてましたし、現国なら僕も教えられますから」
『そうでした、現国の先生なんですよね~』
武「あの~、城戸さん?」
『でも、今日は特に授業が進んでないですけど、いいんですか?』
武田先生の授業は今までの内容の確認や、それに因んだ武田先生なりのサイドストーリーがほとんどだった。
だからなのか、授業中は普段とは違う和やかな空気で、それは武田先生の人柄もあるかも知れないけど楽しい授業だった。
武「担当の先生の進め方もあるでしょうし、だから総復習を兼ねての授業にしてみたんです。単なる自習より、その方がいいと思いまして」
『聞いていて楽しかったです、先生の授業。大好きです』
武「えっ?!あ、あぁ、授業ですよね、授業・・・」
率直に感想を伝えただけなのに、武田先生はそう言いながら、あははと資料たちを小脇に抱えた。
武「それじゃ城戸さん、また放課後に。あなたの事だから遅刻はないでしょうけど、早めに集まって下さいね?」
『はい、じゃあ放課後に』
そう言って先生は教室を出て行った。
放課後・・・かぁ。
昨日の事もあって、なんとなく気が進まないけど・・・
でも、澤村先輩との約束で今日まではマネージャー補佐だから。