第22章 終わりと始まり
澤「別に俺達は何も怪しくないし、せっかくだからいつでも使って?」
そう言う澤村先輩に私は頷き、元々付けていた物を制服のポケットに入れた。
澤「そろそろ帰ろうか?送っていくよ」
『あ、大丈夫です。まだそんなに暗くないし、澤村先輩の帰りが遅くなっちゃうから』
澤「ダメダメ。これは男の責任」
『清水先輩との約束だから、ですか?それなら大丈夫ですよ?』
さっきの荷物持ちの事を思い出して、そう言った。
澤「違うよ、俺が責任を持って送りたいんだ。わかった?」
真剣な眼差しで言われると、それ以上は断れないと感じる。
『分かりました。でも・・・送り狼はダメですよ?』
澤「ちょっ!何言ってんの?!」
クスリと笑いながら小走りで離れる。
『だって清水先輩に言われてたじゃないですか、菅原先輩はセクハラ大王でー、澤村先輩は・・・』
澤「待て!その異名を声に出すんじゃない!」
『どうしよっかなぁー』
カラカラと笑いながら焦る澤村先輩を振り返る。
澤「違う!絶対違うからね!」
何度も念を押す澤村先輩がおかしくて、帰り道はずっと笑いっぱなしで歩いている。
『お腹がよじれるって、こんな感じなんですかね?』
澤「だから、笑い過ぎだって。スガはともかく俺は違うからね!何度も言うけど」
『それは分かりましたから。お家に帰ったら清水先輩に無事帰宅!って連絡する約束してるんです。だから清水先輩もそれでわかると思いますよ?』
澤「無事帰宅!って、清水は俺を信用してないのか?」
『あはは、そっちじゃないと思いますよ?清水先輩、買い出し行ったら私の帰り道が・・・とか気にしてくれてましたから。それでだと思います』
澤「そっか。なら、よかった」
お互い笑い合い、さっき1度来た駅前通りを通過する。
帰り道すがら、どんな本が好きかとか、どんな曲を聞くことが多いかとか、書店やCDショップなどの店舗を通る度に話題を変えながら2人で歩いて行く。
『あ・・・』
ドラッグストアの前まで来て、さっきの及川先輩とのやり取りを思い出し足が止まる。
ホントに偶然、及川先輩と再会して。
澤村先輩にも、きっと嫌な思いをさせてしまった。
『あの、さっきは、』
澤「そんな事は気にしなくていいよ」
謝ろうと言いかけた所で、澤村先輩がそう言った。
『でも・・・』
澤「約束忘れた?」