第7章 嵐の足音
『あ、あっ、あのっ!及川先輩!ダメですよこんなの!は、離してください!!』
一瞬それの暖かさに油断した私は、驚きながら手を引き抜こうとする。
でも、性別も体格も違う大きな手からは逃れることは出来なかった。
「いいじゃん別に?今だけの、2人だけのヒミツで~」
ホントに、もう。
ダメだ・・・自覚があるのかないのか、天然の人タラシなんだ、この人は。
どんなに抵抗しても解かれることのない手を諦め、そのまま歩き出した。
この後は時間までどうするぅ?寒くなって来たから、どっかでお茶でも?などと話す及川先輩の言葉をうわの空にしながら、雑貨屋の前をゆっくり通り過ぎる。
無意識に足が止まる。
店先には、この時期ならではのラッピングに施された商品が所狭しと並べられていた。
「ちょっと寄ってみようか?」
そう言うと及川先輩は、手を繋いだまま店内に入る。
いかにも女子が好きそうなキラキラとした飾り付けの中に、まるでファッション雑誌から抜け出たような長身の及川先輩はとても目立っていた。
そわそわとし始める店内に、及川先輩は何も気にせず、ただ私が商品を眺めている姿を見て微笑んでいた。
いくつかの商品を手に取っては戻しているうちに、チラッと目を引くものを見つけた。
『あ、これかわいい・・・』
思わず呟いて商品を手に取り、色々な角度から
眺める。
派手ではなく、地味な感じではなく、シンプルなデザインながらも、どことなく可愛らしい。
何気なく棚を見ると、どうやらこれが最後のひとつの様だった。
どうしよう・・・買っちゃう?今はまだ堂々と使えないけど、高校へ行ったら使えるし・・・
う~ん・・・と迷っていると
「かわいいの見つかった?そのピアスが気に入ったかな?」
・・・と、耳元でフッと囁かれ肩が跳ねる。
『お、おおお及川先輩!ビックリするじゃないですかっ!あと!耳元で囁かないで下さい!
』
驚いたのと恥ずかしいのとで慌てる私を見て、ケラケラと笑う及川先輩は、私の手からピアスを持ちあげると、ちょっと待っててと言ってサッと会計を済ませてしまった。
「はい。どうぞ?」
『及川先輩、何でもないのにプレゼントとか、ダメです。代金お支払いしますから』
私は言いながらカバンを開けようとした。
すると、及川先輩はそれを制した。