第22章 終わりと始まり
澤「普段の清水は、よく働いてくれてるし、田中の攻撃もサラッと交わす頼もしさもあるけど、これが怒らせると怖いんだ・・・よくいう、おとなしい人ほど怒ると怖い、みたいなさ」
『なるほど・・・』
・・・それ、もの凄く分かりますよ、澤村先輩。
そういう人ほど、自覚、ないんだろうか。
澤「さ、着いた着いた!後は部室の中に入れちゃって、帰るとしますか!」
『ですね!』
鍵を開け、ガチャリと扉を開けながら澤村先輩が微妙な顔をする。
澤「なぜ、この部屋はこうも散らかっているんだ・・・」
そう言う澤村先輩の小脇から覗くと、確かに掃除のしがいがありそうな散らかり具合いが伺えた。
『とりあえず今日これからだと遅くなりそうなので、明日の朝早めに来て掃除・・・しときましょうか?』
ため息を着く澤村先輩に言うと、私だけに頼むのは悪いから自分も早めに来て掃除するよと言う話にまとまった。
澤「さて、帰りますか?」
『帰りましょう?』
澤村先輩が鍵を閉めて、カバンにしまいながら、あっ!と声を上げた。
『忘れ物ですか?』
そう訊ねると、そうじゃないよと言いながらカバンから小さな包みを取り出した。
澤「忘れてた訳じゃないんだけど・・・あ、結果的には似たようなもんか。ま、とりあえず、ハイ」
言いながら私の前にその包みを差し出した。
『なんですか?』
澤「昨日さ、俺が指切った時に一生懸命手当てして貰ったから。そのお礼・・・になるか分かんないけど」
『え?それは当たり前の事をしただけで、お礼なんて・・・』
澤「タオル汚してしまったし、洗濯しても落ちないんじゃないかと思ってさ。だから受け取って?はい、どうぞ?」
有無を言わせず、澤村先輩が私の手にそれを乗せた。
『山口君にも今日、同じ様に言われたんですけど・・・今回限りの、ですよ?だからこれは、ありがたく頂きます』
澤「山口?」
『はい。手を冷やす時と鼻血の手当の時にタオルたくさん汚しちゃったからって言われて、部活の時に、澤、大地さんと同じ様に手渡されました』
澤「へぇ、あの山口がねぇ。一見オドオドしてそうだけど、意外だな」
私もビックリした、色々と山口君の行動力には。
それに、山口君は月島君情報で助けてくれるような優しい所もある。
『あの、いま開けてみてもいいですか?』