第22章 終わりと始まり
澤「いや、大丈夫。俺が慣れるように頑張るから、そのまんまでいいよ」
顔から手を外し、パタパタと手で風を送りながら澤村先輩がそう言った。
『そうですか?じゃあ、私も頑張って呼びますね?その、大地さん?』
澤「?!。あ、うん、わかった、つ・・・紡」
・・・・・・。
自分がそう呼べって言ったのに、澤村先輩から紡って呼ばれると心の奥がくすぐったい。
今までは、ごく当たり前のように呼ばれていた名前が、どうしてこうもむず痒く感じるのかは分からないけど。
そのうち、みんなともっと仲良くなれたら、みんなにも呼び方を変えて貰おうかな。
その方が、より仲良しな感じになれそう。
でも、影山は前から城戸って呼ばれ慣れてるから違和感あったりして。
そこは私も影山を呼び捨てだし、王様とか呼んだりしてるからお互い様か。
・・・月島君なんて、ワンコとか、ポチとかだし。
なんか、その呼ばれ方は複雑だけど・・・
そう言えば、日向君の妹は紡おねえちゃんって呼んでくれてたなぁ・・・
また会いたいな、なっちゃん。
女の子同士でお泊まり会とか楽しそう!
私の周り、女の子って清水先輩しかいないしなぁ。
今度、日向君にお願いしてみようかな?
そんな事を考えながら歩いている内に、学校に着いた。
澤「やっと着いた感じがするね?」
『それはきっと、澤・・・大地さんが重たい物ばっかり持ってくれてるからですよ。交代で持ちましょうって言ったのに、ずーっと持ってくれたから』
私が持たされているのは、明日持っていくのに買ったお菓子の袋だけ。
残りは全て澤村先輩が持つからって譲ってはくれなかった。
澤「まぁそれはさ、女の子に重たい物持たせるとか出来ないし、なんせホラ、清水に荷物持ちを任命されてるしね」
荷物を持った手を軽く上げ、ニカッと笑う。
『言わなきゃ分からないと思いますけど?』
澤「いや、清水は意外と鋭いし。そして、怒らせたら・・・怖い」
それは澤村先輩も同じ・・・と危うく言い出しそうになり何とか留まる。
『清水先輩が?ですか?あんまり想像出来ませんけど。あ、菅原先輩はよく怒られてるの側で見ますけど、そこまでは・・・』
澤村先輩が顔色を変えるほどの怖さって、どんなだろう。
だいたい、澤村先輩こそ怒らせたら怖い・・・の部類に入るのでは?なんて思ってしまう。