第22章 終わりと始まり
『あ、すみませんっ』
「いや、こっちこそ」
特に相手も見ずに、すれ違いながら言葉を交わす。
ー ほらほら、危ないからちゃんと前見なさいよ? ー
『見てますって・・・背が低いから視界が狭いんですー!』
・・・・・・いまの?!
「紡!!」
思わず名を呼んで振り返るも、既に人混みに紛れてどこにいるかは分からない・・・
・・・気のせいか?
でも、確かにいま・・・あの時と同じ、だった。
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『わっ・・・すみません!』
「お前しっかり前見て歩けよ」
『ちゃんと見てますって!でも、背が低すぎて視界が狭いんですー!』
「あーはいはい。じゃホラよ、繋いどけ」
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会話を思い出し、自分の手を見る。
紡・・・だったのか?
いや、でも・・・まさか、な。
なんか今日の俺、思い出してばっかじゃねぇか?
懐かしむとか、年寄りかよ。
ハァ・・・
ちょっと残念なため息を吐いて、気持ちを整えた。
及「あれ?岩ちゃん?こんな所で何してんの?」
顔を上げると、目の前に俺が探し歩いていた本人が突っ立っている。
コイツ・・・
「何してんの?じゃねぇ!むしろテメェがこんな所で何してんだよ!!」
及「なんで岩ちゃん怒ってんのさ」
「怒るだろ!フツー!人を呼び出しといてブラついてんじゃねぇーよ!電話しても出ねぇし!」
俺が言うと、電話?なんて言って確認して、病院だったからサイレントにしてて忘れてた!なんて言いやがる。
ったく、どうしようもねぇ。
「で?とりあえず言い訳は聞いてやる、ここで何してたんだ?」
及「そうそう!岩ちゃん待ってるの退屈だったからプラプラしてて、チラシで粉末ドリンク安いの見つけて買い物してたんだよねー」
「チラシ見て買い物とか、主婦かテメェは!!」
のんびりと答える及川に、蹴りを入れる。
及「痛ったー!岩ちゃん蹴り入れんのやめてよ!・・・あ、そうだ岩ちゃん!実はさっき・・・」
蹴りを入れた場所を手で押さえながら、及川が何か言いかけた。
なんだ?
何でコイツは妙に深刻な顔してんだ?
確かコイツは病院の帰りだったよな。
まさか悪化してるとか?!
「おい!言いかけてやめんじゃねぇ!」
及「え?あ・・・あぁ・・・えっとー。実はさっき、そこのお店でね・・・」